電流の測定方法
電流測定はなぜ必要?その理由と電流の測定方法や注意点を解説
概要
電気の流れは目で見ることはできません。そのため、電流などを測定するには、専用の測定器が必要となります。しかし、そもそもなぜ電流の測定が必要なのでしょうか。また、どのように測定すればいいのでしょうか。
ここでは、電流測定が必要とされている理由や、電流測定に用いられる測定機器の使い方などについて、詳しく説明します。
電流測定の必要性
電子機器は、非常に精密かつ繊細です。そのため、多くの機器は定期的に検査する必要があり、メンテナンスが重要になってきます。測定器がなければ、メンテナンス時や故障したときに、どこに不具合があるのか確認したりすることは難しいでしょう。そのため、電子機器のメンテナンスや故障の原因特定には、電流を測定することは重要な項目になります。
電流を測定するための測定機器はいくつかあります。その中でもよく利用されるのが次の3つです。
- デジタルマルチメーター
- 電流プローブ
- クランプメーター
これらの各計測器は電流の測定に使用できます。用途応じて最適な計測器を選択することが重要です。
このページでは、各計測器を使用して電流を測定する方法について説明します。
デジタルマルチメーターで電流を測定する方法
デジタルマルチメーターは、電流から電圧や抵抗まで電気回路における基本的な測定機能を1台に備えた計測器です。大型モデルからカード型のモデルまであり、さまざまな電気測定のシーンで活用されています。
ほとんどのデジタルマルチメーターは、ロータリースイッチなどで測定ファンクションを変更できます。まずは電流測定(A)にロータリースイッチを切り替えます。
次に、テストリードは黒のマイナス側をCOM端子、赤のプラス側をA端子に挿入します。そして、回路との接続の際には、黒のテストリードを電源のマイナス側、赤のテストリードを負荷側に直列になるように接続します。
テストリードがA端子に挿入された状態で電圧が印加されると、デジタルマルチメーターが壊れてしまう恐れがあるため注意が必要です。したがって、誤って電圧を印加しないように、測定対象の回路の電源を切っておくことをお勧めします。次に、電流を測定する端子間に直列に接続を行った後に電源を入れて測定しましょう。
電流プローブで電流を測定する方法
電流プローブとは、電流を電圧に変換させることにより、オシロスコープなどで電流波形を測定できるようにしたツールです。測定する回路のケーブルを切らなくても、ケーブルの被覆の上から信号観測でき、微小な電流から大電流まで多くの種類が用意されているため、さまざまなシーンでの電流測定に役立つでしょう。
電流プローブには以下の6種類あり、用途に応じて選択します
CT方式
AC 電流の測定専用に設計されています。比較的安価で電源が不要ですが、交流のみの測定用途に使用し直流の測定はできません。
ホール素子方式
AC 電流と DC 電流の両方の測定に使用できます。こちらも安価ですが、精度が比較的低く、温度や経時変化によるドリフトが発生するなどの欠点があり、長期間の電流測定をする必要がある用途には適していません。
ロゴスキー方式
測定電流の周囲に生じる交流磁界により、空芯コイルに誘起される電圧を変換して測定するプローブです。安価で、磁気コアがないため磁気飽和せず大電流の測定ができます。磁気損失によるデメリットもありません。ただし、ノイズの影響を受けやすいため、高精度測定には向いていません。また、測定原理上、直流は測定できないというデメリットもあります。
ACゼロフラックス方式
CT方式による低周波域の特性を改善したプローブです。位相誤差が少ないため、広い周波数帯域で測定でき、電力測定に適しています。ただし、CT方式のため、直流電流は測定できません。
AC/DCゼロフラックス方式電流センサ(ホール素子検出型)
CT方式とホール素子を組み合わせることで直流と交流の両方を測定できます。
AC/DCゼロフラックス方式電流センサ(フラックスゲート検出型)
CT方式とFG素子(フラックスゲート)を組み合わせることで直流と交流の両方を測定できます。
フラックスゲートは動作原理により、広い温度範囲にわたって非常に小さなオフセットドリフトを示すため、非常に正確で安定した測定を実現できます。この高確度を実現した電流センサーは、高精度電力計やパワーアナライザーと組み合わせた使用に最適です。
クランプメーターで電流を測定する方法
クランプメーターで電流を測定するには、まずロータリースイッチを切り替えて電流測定(A)に合わせゼロ調整を行います。次に、測定する電路のケーブルをクランプします。
クランプメーターはケーブルに挟み込むだけで電流を測定できるため、回路を切ることなく電流の値を確認できます。電流が流れると発生する磁界が電流の大きさに比例することを利用し、その磁界を測定することで電流を測定できます。
クランプメーターをケーブルに挟み込む場合、往復2本の線を挟み込んでしまうと磁界を打ち消しあってしまいます。漏れ電流を測定する場合を除いては、2線を挟み込まないようにすることが必要です。
クランプのコアに線を同じ方向に何ターンか巻けば磁界が比例して増えることから、クランプメーターに数多く巻いて磁界を大きくして感度を高める手法もあります。
目的に合わせて測定器を使い分けよう
精密で繊細な電子機器の保全、故障箇所の特定のためには電流などを測定する計測器が必要です。電流の測定には、デジタルマルチメーターや電流プローブ、クランプメーターなどの計測器がよく使われます。測定したい電流や目的に合わせて、自分に合った測定器を使って測定しましょう。