製品・技術 2025.02.12

電解セル稼働時の特性を解析し、運転効率最適化を追求 電解セルアナライザ ALDAS-Miniを発売

  • 電解セルアナライザ ALDAS-Mini

HIOKI(日置電機株式会社:長野県上田市、代表取締役社長:岡澤尊宏)は、2025年2月12日、水素製造用電解セルの研究開発に向けた、コンパクトかつ高性能な電解セルアナライザ ALDAS-Mini(アルダス・ミニ)を発売します。ALDAS-Miniは高精度なインピーダンス計測により電解セルの特性評価を加速させ、水素エネルギーを活用した持続可能な社会の実現を支援します。

開発の背景

気候変動対策が世界的に加速する中、水素は世界のエネルギー転換における重要な役割を果たす存在として注目されています。国際エネルギー機関(IEA)の推計によると、2024年の世界の水素需要は1億トン近くに達する見込み※1であり、カーボンニュートラル実現に向けた水素の需要が高まっていることを示しています。クリーンエネルギーである水素は、自動車や海運などのモビリティ分野、電池に代わるエネルギー貯蔵手段、混焼※2による発電など、さまざまな分野での活用が期待されています。

水素の製造方法にはいくつかの手法があります。化石燃料を燃焼させて製造する方法では、水素製造プロセスにおいて二酸化炭素を排出するため、カーボンニュートラルに向けた課題が残ります。一方で二酸化炭素を排出せず水素を製造する方法として、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー由来の電気を使用し、水電解(水に電気を流して水素を製造する方法)があります。この方法で作られた水素は、グリーン水素と呼ばれ注目されています。

水電解による水素製造プロセスには、製造システムの性能向上、規模拡大、コスト低減など、克服すべき多くの課題があります。特に水素製造システム内の主要構成部品である電解セルの性能は重要であり、世界中の研究者や電解セルメーカー、水素製造装置メーカーが性能向上と技術開発に取り組んでいます。

電解セルアナライザ ALDAS-Miniは、実際に水素製造システムが稼働する状態において、電解セルの特性を計測します。正確で再現性の高い計測により、電解セルの劣化要因の特定、材料特性の評価研究、運転効率の向上といった課題解決に貢献します。また従来では困難であった大型セルやセルスタック※3状態におけるインピーダンス計測を実現し、水素製造プロセスの研究開発を支援します。

  • 水素製造システムでの使用を想定し、実運用レベルの高電流密度で電解セルを性能評価
  • 長時間の連続試験で耐久性の確認
  • 電解セルの材料特性を観察し、最適な材料の模索

ALDAS-Miniは研究段階から実証段階におけるさまざまな状況で電解セルの測定を行うことにより、水電解技術の発展と水素を活用した、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現に向けて重要な役割を果たします。

  • ※3セルスタック:水素発生の効率を高めるため、複数の電解セルを重ねた状態。

特長

1. 革新的なインピーダンス計測

従来、水電解セルの解析装置として使われている周波数応答アナライザー(FRA)では、大型セルや大型セルスタックの評価に限界がありました。ALDAS-Miniは最大500Aの電解電流に対応し、大型電解セルのI-Vカーブとナイキストプロットを同時に描画できます。稼働状態のセル内部のインピーダンス計測など、水素製造の効率向上に重要な特性を得られます。

2. スムーズな導入と接続

ALDAS-Miniは既存の電解装置を改造することなく、簡単に導入可能です。電解用の直流電源をそのまま活用しながらインピーダンス計測ができるため、さまざまな研究環境での使用に対応しています。

3. 複数セルの同時計測

セルスタック内で最大8セルの同時計測に対応し、セルごとの性能比較を可能にします。

4. ノイズ環境下での高精度計測

電気的ノイズの多い環境下でも一貫性のある信頼性の高い計測が可能で、実用性に優れています。

5. 幅広い互換性

PEMEC、SOEC、AWE、AEMなど、さまざまな種類の電解セルに対応し、小規模な研究用セルから大規模なセルスタックまで、幅広い用途に適用可能です。

主なアプリケーション

  • 小型から大型までのさまざまな電解セルの評価
  • 電解セルの状態監視と劣化要因の分析
  • 水素製造の最適化
    • 高電流密度と長寿命を実現する材料研究のための動特性計測
    • 効率改善とコスト低減のための運転条件の評価
  • 材料研究
    • 電解セルの触媒や膜、その他の材料の性能向上のための研究
    • さまざまな運転条件下での電荷移動特性と物質移動特性の評価

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