モーターの耐久試験における温度・電力データに基づく耐久性判定
はじめに
EVや産業機器の高性能化に伴い、モーターには長時間の高負荷の状態で壊れずに安定して動作し続けることが求められています。製品の信頼性を保証するためには、実使用に近い条件での耐久試験が不可欠です。しかし、負荷変動や温度上昇、電気的なストレスなど、モーターに掛かる要因は多岐にわたり、それぞれの指標から劣化の兆候を正確に捉えることが大きな課題となっています。
モーターの耐久試験における課題
モーターの耐久試験では次のような課題があります。
- 電気的な変化(瞬時的な変動、高調波や効率の低下)が見えにくい
- モーターの巻線や筐体、周辺設備の温度変動と電気的特性の関係性が見えない
- 長時間のデータを同期して取り続ける仕組みがない
提案するソリューション
HIOKIの高精度パワーアナライザと温度測定用のロガーを組み合わせることで、モーターの耐久試験をシンプルな構成で実施することができます。

データロガーLR8450を用いて周辺設備やコンポーネントの温度を測定し、パワーアナライザPW8001やPW4001を用いてインバーターやモーターのパラメータを測定します。
このとき、パワーアナライザPW8001やPW4001にはCAN出力機能が搭載されていますので、測定したパラメータをCANによってデータロガーLR8450に集約*1することで、同期した測定を行うことができます。また、インバーターのエミュレーターにCAN出力機能があれば、制御信号も含めてLR8450でモニター可能です。電力と温度の変化を長時間安定して記録することで、モーターの劣化の兆候をすばやく検出することができます。
- *1:LR8450のオプションであるCANユニットU8555を使用します。最速10 msでのCANデータロギングができます。
本ソリューションによるメリットは次のとおりです。
- 電圧や電流のバランスの変化
- 効率の微小変動
- 高調波成分の推移
1. モーターの電気的ストレスを高精度に連続モニタリング
- モーターの巻線温度
- 筐体温度
- ベアリングや冷却水を含む周辺設備の温度
2. 温度の推移を正確にロギング
- データロガーのトリガ機能を用いたイベント記録
- CSVによるデータの統合解析
3. 電気データ と温度データの相関分析
実測例
HIOKIのモーターベンチを使用して実測を行いました。

レイアウト図
モーター温度測定箇所
使用機器リスト
| 機器名 | 数量 | 品名 |
|---|---|---|
| LR8450 | ×1 | MEMORY HiLOGGER |
| U8551 | ×1 | UNIVERSAL UNIT |
| thermocouple with shield | ×5 | ― |
| U8555 | ×1 | CAN UNIT |
| CAN cable | ×1 | ― |
| PW8001-13 | ×1 | POWER ANALYZER |
| U7005 | ×4 | 15MS/S INPUT UNIT |
| CT6904A | ×4 | CURRENT SENSOR |
DUT情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Test Motor | Fuji Electric Co., Ltd. GNF2117A |
| Inverter | Myway Plus Inc. MWINV-5044-SIC SIC Vector Control |
測定条件
- モーター1000 rpm定回転
- SiCインバーター スイッチング周波数 10 kHz
- データ更新レート10 ms
- 簡易的な試験のため、2時間程度の連続運転とする
- PW8001の測定パラメータをCANで出力してLR8450で集約する
温度測定のポイント
インバーター付近では高周波のスイッチングによるノイズが発生します。このノイズの影響によって温度測定値が不安定になりやすいため、温度センサー(熱電対)のシールドや、本体のフィルター設定などのノイズ対策が必要です。
今回は、温度測定用にシールド付き熱電対を用いています。シールドをモーターシャシーに接続することでGNDを強化しています。
シールド付き熱電対セットアップ
また、LR8450の本体でU8551のユニットのデータ更新間隔を1秒に設定し、デジタルフィルターを有効にすることで、60 Hz以上を超える高周波成分のノイズを減衰する工夫をしています。
LR8450 フィルター設定
| Power supply frequency filter setting | Wire break detection setting | Data refresh interval | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10 ms | 20 ms | 50 ms | 100 ms | 200 ms | 500 ms | 1 s | 2 s | 5 s | 10 s | ||
| 60 Hz | Off | 20.8k | 6.94k | 2.98k | 2.37k | 739 | 60 | 60 | 60 | 60 | 60 |
| On | – | 20.8k | 6.94k | 2.98k | 2.37k | 739 | 60 | 60 | 60 | 60 | |
| 50 Hz | Off | 20.8k | 6.94k | 2.98k | 2.37k | 739 | 50 | 50 | 50 | 50 | 50 |
| On | – | 20.8k | 6.94k | 2.98k | 2.37k | 739 | 50 | 50 | 50 | 50 | |
–: Setting not available
Unit: Hz
インバーター測定のポイント
インバーター出力電力は高周波かつ低力率のため、特にスイッチング周波数とその高調波成分を正確に測定できるパワーアナライザと電流センサーが必要です。今回はSiCインバーターを測定するため、より帯域性能と位相特性に優れたPW8001とCT6904Aの組合せがおすすめです。
アプリケーションノート ハイエンドクラスのパワーアナライザーによるSiCインバーターの実測比較 もご覧ください。
判定条件の例
- 1.定常運転時のモーターの回転数が1000 rpm±50 rpmであること
- 2.モーターの各種測定ポイントにおける温度が50°Cを超えないこと
- 3.定常運転時のそれぞれの効率の変動が±5%以内であること
- 4.そのほか、急激なトルク変動やモーターパワーの変動が見られないこと
測定結果
ロガーで記録したデータを、GENNECT ONEを使用して分析しました。

温度と効率の関係
今回の耐久試験中では、モーターの回転数およびトルクに加え、それぞれの効率と温度変化を同時に測定しています。試験開始から終了まで、各測定値に設定した許容範囲を超えることなく安定的に動作していることを確認しました。
実際の試験では、負荷条件や周囲温度、測定時間、判定条件を変更して繰り返し評価を行い、モーターの耐久試験における信頼性を確保します。
以上から、HIOKIの測定器を組み合わせることで、モーターの耐久試験の定量評価ができます。
まとめ
HIOKIのパワーアナライザとデータロガーを組み合わせることで、モーターの電気ストレスと温度変化を高精度かつ同時に追跡し、劣化の兆候を確実に捉えるシンプルな試験環境を構築できます。
詳しい製品の情報は、Webサイトご覧ください。
特定のアプリケーションに関するデモンストレーションやご相談は、お問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。
関連資料
- アプリケーションノート:ハイエンドクラスのパワーアナライザーによるSiCインバーターの実測比較
- アプリケーションノート:耐久試験での異常を自動的に検出する
