リチウムイオン電池の生産と検査:開放電圧(OCV)検査

リチウムイオン電池の開放電圧(OCV)検査とは

リチウムイオン電池のセル生産ラインでは、不良品を検出する重要な検査の1つとして開放電圧を測定しています。負荷に接続していないときの電池電圧を開放電圧(Open Circuit Voltage)といいます。電池は自己放電特性を持っています。この特性によって、開放電圧値は徐々に低下します。電池の内部に不良がある場合、自己放電がより大きくなります。生産ラインでは、規定値以上に開放電圧が低下した電池を検出し、不良品として取り除いています。

どのタイミングで検査を実施するか

電池セルへの初充電が完了した後の各工程で、開放電圧検査を実施しています。なかでもエージング工程では、一定の間隔で開放電圧を測定し、変化量を確認しています。自己放電による開放電圧値の変化量はわずかです。エージング工程では、少なくとも100時間から400時間かけて不良品を検出します。

開放電圧の測り方

電池セルの開放電圧を測定する場合、直流電圧計を使います。直流電圧計は、電池セルの正極と負極間の電圧を検出します。

直流電圧計の選定ポイント

電圧計の選定ポイントは、以下のとおりです。

  • 分解能
  • 確度の計算
  • 温度補正機能

分解能

電池セルの生産ラインでは、開放電圧のわずかな違いから不良品を検出します。分解能が高い直流電圧計を使うと早いタイミングで不良品を検出し、検査時間を短縮できます。

確度の計算

計測器の性能を正しく把握するために、確度計算が重要です。計測器の多くは、「リーディング誤差」と「デジット誤差」で確度を規定しています。

温度補正機能

電池の開放電圧は温度によって変動します。測定時の温度が1℃変わるだけで、開放電圧値が数百μ V変わることもあります。測定時の温度環境を均一に保つことが重要です。温度補正機能は、測定値を基準温度の電圧に換算します。

HIOKIの直流電圧計

弊社の直流電圧計は、世界各国のバッテリーメーカーのお客様に採用いただいております。

電池セル生産工程の開放電圧検査に採用いただいているモデルは以下の通りです。

製品形名DM7276BT4560BT3561ABT3562A
表示桁数7 1/2桁,
12.000 000
5 1/2桁,
5.100 00
5 1/2桁,
6.000 00
5 1/2桁,
6.000 00
測定レンジ/分解能
*4 V測定推奨レンジ
120.000 00 mV/
10 nV
5.100 00 V*/
10 μV
6.000 00 V*/
10 μV
6.000 00 V*/
10 μV
1200.000 0 mV/
100 nV
—/—60.000 0 V/
100 μV
60.000 0 V/
100 μV
12.000 000 V*/
1 μV
—/——/—100.000 V/
1 mV
120.000 00 V/
10 μV
—/——/——/—
120.000 00 V/
100 μV
—/——/——/—
測定確度*±0.0009% rdg ±12 μV±0.0035% rdg ±5 dgt±0.01% rdg ±3 dgt±0.01% rdg ±3 dgt
測定誤差*±48 μV±190 μV±430 μV±430 μV
温度補正機能
温度測定
電池の内部抵抗測定
  • *4V測定推奨レンジで4Vのリチウムイオン電池を測定した場合の測定確度と測定誤差を記載しています。

BT3561A, BT3562A,BT4560は開放電圧と同時に内部抵抗を測定できます。

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