リチウムイオン電池の生産と検査:絶縁抵抗検査
リチウムイオン電池の絶縁抵抗検査とは
リチウムイオン電池のセル生産ラインでは、不良品を検出する重要な検査の1つとして絶縁抵抗を測定しています。構造上、リチウムイオン電池の正極と負極間、電極と外装(ケース)間は、絶縁を保つ必要があります。絶縁が保てていない、つまり絶縁抵抗が不足する場合、発火事故につながるおそれがあります。
絶縁不良の要因はさまざまですが、電池セルの生産工程では特に、「内部短絡」を要因とする不良を検出します。
どのタイミングで検査を実施するか
電池セルの絶縁抵抗検査は、一般的に以下のように実施されています。 *
- 電池セルに電解液を注液する前-電池セルの「負極と正極間」に直流電圧を印加し、絶縁抵抗を測定します。
- 電池セルに電解液を注液した後-電池セルの「電極と外装間」に直流電圧を印加し、絶縁抵抗を測定します。
- *検査のタイミングや測定箇所はメーカーによって異なります。
絶縁抵抗の測り方
電池セルの絶縁抵抗を測定する場合、高抵抗測定に特化した絶縁抵抗計を使います。絶縁抵抗計は、検査対象に直流電圧を印加します。電圧を印加した時に流れる微小な電流を検出し、抵抗値を算出します。絶縁抵抗計は、微小電流を正確に検出する高感度な電流計を内部に搭載しています。
絶縁抵抗計の選定ポイント
絶縁抵抗計の選定ポイントは、以下のとおりです。
- 絶縁抵抗値の測定範囲と確度
- 試験電圧
- 充電電流
- 自動放電機能
- コンタクトチェック機能
絶縁抵抗値の測定範囲と確度
セルの絶縁抵抗検査では、高抵抗測定に特化した絶縁抵抗計を使います。良品と不良品を選別する基準値(抵抗値)は、電池によって異なります。検査対象の基準値と絶縁抵抗計の測定範囲を確認します。
試験電圧
試験電圧は、絶縁抵抗計が検査対象に印加する電圧のレベルです。適切な試験電圧は、電池によって異なります。電池セルの絶縁抵抗検査では、一般的に、100 Vから200 Vの直流電圧を印加しています。最近では、5 Vや50 Vとといった低電圧を印加するケースも増えています。
充電電流
検査時間を短縮するために、充電電流が重要です。充電電流は、絶縁抵抗計が出力する電流の大きさを表します。電池セルは構造上、容量成分を含んでいます。そのため、設定した試験電圧に昇圧されるまでに時間(容量の充電時間)がかかります。充電電流が大きければ、充電時間も早くなるため、検査時間を短縮することができます。
自動放電機能
自動放電機能は、電池にたまった電荷を放電させる機能です。試験電圧を印加すると電池の容量成分に電荷がたまります。電池に電荷を残した状態で、次工程の検査設備などに接続した場合、設備が故障するおそれがあります。絶縁抵抗計に搭載される放電機能には、2つの方式があります。「抵抗方式」と「定電流方式」です。電池セルの場合、「定電流方式」がより速く電荷を放電でき、検査時間を短縮できます。
コンタクトチェック機能
コンタクトチェック機能は、信頼性の高い検査を行うために重要な機能です。測定プローブと検査対象の接触状態を確認します。測定プローブが検査対象に接触していない場合、誤って不良品を良品として判定するおそれがあります。(接触していない場合、絶縁抵抗値が高くなるためです)
HIOKIの絶縁抵抗計
弊社の絶縁抵抗計は、世界各国のバッテリーメーカーのお客様に採用いただいております。
電池セル生産工程の絶縁抵抗検査に採用いただいているモデルは以下の通りです。
製品形名 | BT5525 | ST5520 | SM7110 | SM7120 |
---|---|---|---|---|
測定範囲 | 0.050 MΩ ~ 9999 MΩ | 0.002 MΩ ~ 9990 MΩ | 0.001 MΩ ~ 10000 PΩ | 0.001 MΩ ~ 20000 PΩ |
試験電圧(DC) | 25 V ~ 500 V | 25 V ~ 1000 V | 0.1 V ~ 1000.0 V | 0.1 V ~ 2000.0 V |
代表確度 | ±1.5%rdg. ±2 dgt. | ± 5% rdg. | ± 0.53% rdg. ±12 dgt. | ± 0.53% rdg. ±12 dgt. |
測定電流 | 50 µA ~ 50 mA | 1.8 mA | 1.8 mA ~ 50 mA | 1.8 mA ~ 50 mA |
自動放電機能 | 定電流方式 | 定電流方式 | 定電流方式 | 定電流方式 |
コンタクトチェック機能 | ○ | ○ | ○ | ○ |