電源品質とは何か、なぜ測定をするのか?
電源品質とは何ですか?
定義
電源品質(電力品質)とは、交流電力が一定の限度を超えた場合に、ユーザーの機器に影響を与える事項を表すものです。図1は、電源の品質を示す波形です。振幅、連続性、波形の形状、周波数などが安定していることが求められます。
- A : 振幅
- 電圧の実効値の安定性が求められる
- B : 連続性
- 波形に連続性があり、途切れないこと
- C : 波形の形状
- 歪まないこと
- D : 周波数
- 安定性が求められる
図1:電圧波形の例
何らかの原因により、その状態から崩れると、電源品質が悪くなります。図2に示す波形は、電圧スウェル(サージ)という現象を表しています。これは、電圧が瞬間的に上昇する現象のことです。電源電圧の上昇により、機器の電源を壊したり、リセット動作を引き起こしたりすることがあります。
図2:電圧上昇(サージ)波形の例
なぜ電源品質を測定するのか?
落雷のような自然現象、電源負荷の配分が不均等、配線の不良、誤った接地などが電源品質に影響を与えます。近年では、インバーターを使った機器の使用が増え、系統と連携した電気自動車の充電器の設置、太陽光や風力発電といった系統に連携する新エネルギーの普及が進んでいます。これにより、電力のネットワークがより複雑になり、電源品質へ大きな影響を与えています。
電源品質の低下は,受変電設備の障害や電子制御機器の誤動作などを引き起こします。例えば,高調波はリアクトルの焼損やコンデンサの異常音の発生を引き起こし,インパルスなどのノイズや電圧低下はコンピュータを使用した制御システムの故障を引き起こします。
電源品質の低下によって起こる電源ラインの異常は、電力を供給する側と電力を使用する側のどちらにおいても共通の問題です。電源異常の直接原因は、供給側、使用する側どちらの電力システムに問題があるのかが一概にわからないのが現状です。直接の原因がどこにあるのかを見極めて、有効な対策を行うために電源品質測定が必要です。
電源品質はどのように測定するか?
電源品質は規格に基づいて測定することが多いです。電源品質規格は、電力供給の品質を測定し評価するための指針として役立っています。これにより、測定値の一貫性が確保され、どのような電源品質の問題が存在するかが特定できます。また、電力システムの品質基準や信頼性基準を満たしていることを確保する役割も果たしています。さらに、電源品質を評価し、改善するための指針も提供されています。以下は、電源品質(電力品質)に関する国際規格の例です。
- IEC 61000-4-30
- IEC61000-4-30は交流電力供給システムにおける電源品質測定に関する試験及び測定技術に関する国際規格です。この規格では2つのクラス(A,S)が定義されています。もっとも信頼できる電源品質測定は、クラスAに対応する測定器を用いることになります。クラスAに要求される内容は、測定器の機能、性能は要求測定確度、測定のアルゴリズム、そして測定器の時刻精度も満たす必要があります。
- IEC 61000-4-7
- 電力供給システム内の高調波電流および高調波電圧、ならびに装置から放出される高調波電流の、測定のための国際規格の1つで、標準測定器の性能を指定しています。
- IEC 61000-4-15
- 電圧変動・フリッカ測定の試験手法、測定機器への要求を定めた規格です。
- EN 50160
- 電源電圧などの限度値を定義するヨーロッパの電源品質規格です。
- IEEE 1159
- 電源品質監視のための推奨事項
- IEEE 519
- 高調波電圧や高調波電流に関する規格です。
電源品質アナライザは、電源品質の測定する際に使用する測定器です。電源のさまざまなパラメーターを測定する計測器です。電圧、電流、周波数、高調波、トランジエントなどのデータを記録し、電源品質が分析できます。これらのデータより、測定者は電源品質の問題を診断し、規格への準拠を確認し、電力システムの性能を最適化することができます。
HIOKIが提供するソリューション
HIOKIには系統の電力を測定できる測定器があります。
形名 | PQ3198 | PQ3100 | PW3360-21 | PW3365 |
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電力および高調波の記録 | 有り | 有り | 有り ※1 | 有り ※2 |
電源品質の測定 | 有り | 有り | 無し | 無し |
IEC 61000-4-30 | Class A | Class S | — | — |
EN 50160の測定 | 準拠 | 準拠 | — | — |
IEEE 519 | 準拠 | 準拠 | — | — |
お勧め用途 | 機器にトラブルの原因となる電源状態の調査・診断・対策を行うとき | システムの負荷容量を把握したり、システムの電源品質を把握したりするために、電力系統の調査を実施する必要がある場合に使用する | 設備やシステムの消費電力を把握するとき | 設備やシステムの消費電力を把握するとき |
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世界は持続可能な社会の実現に向けて脱炭素化が進んでいます。さまざまな系統と連携する革新的なソリューションが増え、電力のネットワークはより複雑になっています。また、省エネのニーズによるインバーターの技術の成長も注目されています。これらの要因が電力を消費する側と供給側の両方にどのような品質の影響を与えるかを検証することが重要です。HIOKIの電源品質アナライザは、電力品質をより良く、より速く理解することを支援いたします。