EVのエネルギー&サーマルマネジメントに最適な次世代データロガー

はじめに

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電気自動車(EV)の開発において、エネルギーマネジメントとサーマルマネジメントは密接に関わり合っています。たとえば、EVでは空調による電力消費が走行距離や性能に影響を与えるため、冷暖房のエネルギー消費を抑えることが重要な課題です。そのためには、ヒートポンプやヒートリカバリーシステムの効率を正確に評価することが欠かせません。電力消費量だけでなく、発生する熱量も合わせて測定し、車両全体のエネルギー配分を最適化する必要があります。
また、急速充電を行うとバッテリーの内部温度が上昇し、そのまま放置すれば性能劣化や安全性の低下を招くおそれがあります。こうした問題を防ぐには充電中の電流制御と冷却システムによる温度管理を連動させることが重要です。

このように、EV全体のエネルギー効率と安全性を高めるには、電力と温度変化をリアルタイムで同時にモニタリングし、それぞれのバランスを最適に保つ必要があります。
しかし、実際の開発現場では、電力と温度をそれぞれ別々の機器で測定しており、データの同期や統合に多くの開発工数やコストが掛かっています。

もし、これらのデータを一つのシステムで、リアルタイムかつ高精度に同期取得できたらどうでしょうか?
この記事では、EVのエネルギー&サーマルマネジメントにおける課題と、それに対するソリューションを紹介します。

対象となるお客様

  • EVパワートレインの制御開発担当者
  • 空調システムの開発エンジニア
  • バッテリーマネジメントシステム開発エンジニア
  • 大規模評価システムのシステムインテグレーター

課題:電力と温度のデータが同期できず、制御の最適化が進まない

EVの効率的な運用には、熱の発生とエネルギー分配をリアルタイムで正確に把握する必要があります。しかし、多くの開発現場では以下のような機器構成に頼っています。

  • 汎用DAQによる温度測定
  • 高電圧入力に対応した別機器による電力測定

このような構成では以下のような問題が発生します。

  • データのタイムスタンプが揃わず、相関分析が困難
  • 温度変化と電力変化の因果関係が見えない
  • テスト後のデータ統合と処理に時間が掛かる

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解決策:電力と温度を一括で測定する統合システム

HIOKIのモジュール型ロガーシステム「LR8100シリーズ」とその拡張ユニットであるM7103(電力)とM7100(温度)は、電力と温度を同期して取得できる統合測定ソリューションを提供します。



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主な特長

  • 最速5 ms周期での電力演算(有効電力・無効電力・皮相電力)
  • DC 1500 V対応の高電圧安全設計
  • 最大3000chまで拡張可能な熱電対入力
  • 豊富な電流センサーラインアップから最適なサイズ、定格を選択
  • CAN・XCP対応で上位システム連携も容易
  • 光リンクによって最大120chまでの電力測定ができる
  • エンジンルームでの煩雑な作業をシンプルかつ迅速に行うことができ、燃費試験や性能試験での準備時間を大幅に短縮します。
  • 入り組んだ配線や狭い箇所でも、簡単に複数のセンサーを設置することができます。
  • HIOKIの計測機器は、EVのさまざまなコンポーネントの複数のポイントで電力を計測できます。
  • バッテリーセルの温度を高精度に測定し、過熱の兆候を早期に検出します。
  • エアコンの吸気・吹出し・配管の温度を同時に監視し、性能評価と異常検知を支援します。

活用事例紹介

  例:電力総合モニタリングシステム

測定対象:

  • DC/DCコンバーターの効率測定
  • モード走行中のバッテリーおよび各種コンポーネントの電力測定
  • エアーベント、車両内、外気、バッテリーの温度測定
  • 車両全体の消費電力測定

課題:

  • 外気温や走行モードに応じて電力と温度が大きく変化する
  • 効率が下がる領域を特定できず、制御系統の改善が困難
  • 測定箇所が多く、複数の測定器を用意する必要がある
  • 車両内の測定箇所が狭く、多数の電流センサーを接続するのが困難
  • 膨大な測定データの収集方法

解決方法:

  • 高精度な電力と温度の同期測定をシングルマシンで実現
  • M7103によりバッテリーやコンポーネントの電力変化を最速5 ms周期で記録
  • M7100でバッテリー温度や冷却系システムの温度を同時測定
  • 小型軽量なクランプセンサCT6830シリーズによって実車環境での多点測定ができる
  • 膨大なデータをCANで出力して、上位システムにデータ統合
  • 温度×電力の相関マップを作成し、制御パラメータ最適化

導入効果:

  • 消費電力の削減効果を見える化することで、冷却システムの過剰制御を回避
  • ヒートマップにより冷却性能と航続距離のトレードオフ点を明確化
  • 実車環境(熱損失や空力性能への影響を最小限に抑えた状態)での試験ができる

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  • 高精度な電力と温度測定を単一のデバイスで実現
  • 5 ms間隔で急激な電力変化を確実に捉える
  • バッテリーと冷却システムの温度を同時に監視
  • 小型センサにより多点測定やCANデータの統合にも対応

まとめ

EVのエネルギーマネジメントとサーマルマネジメントは、航続距離の延長や充電効率の向上、温熱快適性の維持において重要な役割を果たします。その最適化の鍵を握るのが、多チャンネルかつ高精度での電力&温度の同時測定です。
LR8101, LR8102は、電力と温度を1台で同時測定できる高精度なデータロガーとして、これらの課題解決を強力にサポートします。
EV開発の「見えない損失」を「見える改善」へ。次世代EVの開発品質を一歩先へ進めましょう。

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