パワーコンディショナーの効率評価における高電圧、大電流、大電力の測定

パワーコンディショナーは、発電効率の向上や構築コストの削減などを目的に、高電圧、大電流、大電力への対応が進んでいます。本記事では、パワーコンディショナーの効率評価における高電圧や大電流の大電力測定についてご紹介します。

パワーコンディショナーの効率とは?

パワーコンディショナーは、目的に応じて電気エネルギーを適切な状態に変換します。例えば、太陽光パネルで発電された直流の電力を交流の電力に変換し、電力系統へ送電します。
この変換には電気エネルギーの損失が伴います。パワーコンディショナーの性能を表す重要な指標として「効率」があります。効率の良いパワーコンディショナーは、損失が少なく、発電された電気エネルギーを有効に活用できます。

パワーコンディショナーの効率評価に最適なツールとは?

効率の評価において最適な測定器といえば、パワーアナライザです。パワーアナライザは、電力を解析するための演算機能を有しています。試験対象の複数箇所から電圧と電流を同時に取得し、演算によって電力のさまざまな成分を解析できます。

パワーアナライザでの電力解析例

  • 効率、損失、基本波無効電力Qfnd、DCリプル率、三相不平衡率など、パワーコンディショナー評価に必要なパラメータを解析
  • 左:異なる2系統の三相平衡状態を解析
    右:スイッチング電源等より発生するとされる2 kHz ~ 150 kHzの伝導ノイズをFFT解析

大電流の測定

電流の測定には「電流センサー方式」と「直接結線方式」の2つの方法があります。しかし、直結結線方式では、大電流の測定が困難です。大電流の測定には、電流センサー方式が適しています。また、電流の大きさだけでく、測定の正確性においても電流センサー方式に利点があります。

電流センサー方式の測定イメージ

測定対象の配線に電流センサーを接続。配線や計器損失の影響を軽減し、高効率システムを実稼働環境に近い配線状態で測定できる。



挿入損失が小さい
引き回しの影響が小さい

直接結線方式の測定イメージ

測定対象の配線を引き回して、電流入力端子に接続。配線抵抗や容量結合の影響が増加し、シャント抵抗による計器損失も誤差の要因となる。



1. 長い引き回しによる配線抵抗損失
2. 容量結合による漏れ電流損失
3. シャント抵抗による計器損失

それぞれの方式で電流を10分間継続して検出した後の温度


電流センサー方式


直接結線方式
シャント抵抗によって電流を検出
シャント抵抗の発熱が測定値に影響を及ぼす

高電圧の測定

1000 V以上の高電圧をパワーアナライザで測定する場合、高電圧差動プローブ、計器用変圧器(VT, PT)または、ハイボルテージディバイダ(高電圧分圧器)を使用し、電圧を分圧します。計器用変圧器は、直流およびPWMなどの矩形波や歪み波の測定に適しません。また、高電圧差動プローブは数%の測定誤差が生じます。0.1%オーダーの効率改善効果を把握したい場合、直流およびPWMなどの矩形波や歪み波を正確に測定できるハイボルテージディバイダが最適です。

  • 高電圧差動プローブ
  • 計器用変圧器(VT, PT)
  • ハイボルテージディバイダ

パワーコンディショナー内部の各所における電力損失を把握する

例えば、平滑用DCリアクトルに対する入力側と出力側の電力は、スイッチング制御によって発生したスイッチング周波数や高調波の影響を受けます。リアクトルで生じる電力損失を正確に測定するためには、DCや50 Hz/60 Hzだけでなく、高周波成分の測定が必要です。

測定器の周波数特性

測定器には周波数特性があります。周波数特性の一つとして、高周波帯域の振幅誤差と位相誤差の変動が挙げられます。さまざまな周波数成分を含んだ電力を正確に測定するために、DCや商用周波数(50 Hz/60 Hz)といった代表的なポイントだけでなく、高周波帯域における誤差の把握が重要です。

  • 周波数特性
    AC/DCカレントセンサCT6877A(HIOKI)
  • 周波数特性
    AC/DCハイボルテージディバイダ VT1005(HIOKI)

位相補正とは?

電流センサーやディバイダの位相誤差をパワーアナライザで補正することによって、高周波の電力も正確に測定できます。

HIOKIが提供する計測ツール

正確に電力を測定するために、パワーアナライザだけでなく、電流センサーやディバイダの性能も重要です。HIOKIはセンサーからパワーアナライザまで、自社で開発し生産しています。各製品の性能とともに親和性を向上することで、正確な電力測定を実現します。

フラッグシップであるPW8001から、携帯性に優れたPW3390まで3機種のパワーアナライザをラインアップしています。
PW8001はDC1500 V, AC 1000 Vの直接入力にも対応しています。

電流センサー

クランプ型と貫通型の電流センサーをラインアップしています。クランプ型で最大1000 A、貫通型で最大2000 A測定できます。また、CT9557によって複数の電流センサー出力を加算し、多条配線のラインで最大8000 A測定できます。

ハイボルテージディバイダ(高電圧分圧器)

最大5000 Vの電圧を分圧し、出力します。高電圧差動プローブよりも測定確度が優れているため、高電圧を正確に測定できます。

パワーアナライザ

技術資料