データロガーの用途と使い方
データロガーは様々な場面で活用されており、その汎用性と効果的なデータ収集能力から、多くの分野で重要なツールとなっています。この記事では、データロガーの一般的な用途、および使い方を視点とした設定の主な要素、活用事例について解説します。
データロガーの一般的な用途
単体部品の温度測定からバッテリーの電圧、電流、温度、ひずみの異なるパラメータの同時測定や多チャンネル測定まで、さまざまな応用例をご紹介します。データロガーが使用する現場でどのように役立つか説明します。
目的設定
- データロガー LR8450-01
データロガーの役割
データロガーは、正確な測定とデータ収集のための重要なツールです。その用途は多岐にわたり、単体部品の温度測定から、バッテリーの電圧、電流、温度、ひずみなど、複数のパラメータを同時に測定する多チャンネル測定まで、さまざまなデータ収集のために使用されます。正確なデータは、製品の品質保証、プロセスの最適化、診断、研究開発などに不可欠です。
データ収集の目的
データロガーを最大限に活用するためには、まずデータ収集の目的を明確にすることが必要です。目的によって、多くのチャネル数、さまざまな測定対象、高い測定確度、速いサンプリング速度、大容量の記録メモリが要求されます。記録したい現象が正しく取得でき、必要な期間のデータを保存できることが重要になります。
データロガーの使い方
チャネル数の選択
データロガーのチャネル数の選択は、測定対象とデータ収集の目的に密接に関連しています。適切なチャネル数を選択することで、データ収集の同時性と効率性を高めることができます。
- 単体部品の温度測定: このようなシンプルな測定では、少ないチャンネル数で十分です。一つまたは少数の温度センサーを使用し、特定の部品やポイントの温度を監視します。
- バッテリーの電圧、電流、温度、ひずみの同時測定: これらのパラメータを同時に測定するためには、複数のチャネルが必要になります。特に、電気自動車や高度な電子機器などの複雑なシステムでは、多チャンネル測定が必須です。これにより、異なるパラメータの相関関係を理解し、システムの全体的なパフォーマンスを評価することが可能になります。
- メモリ容量の考慮: 複数のチャンネルを使用する場合、収集されたデータを保管するための十分なメモリ容量が必要です。特に、高頻度でデータを収集する場合や、長期間にわたるモニタリングを行う場合は、大容量のメモリが必要となります。
測定要素の選択
温度のみを測定する場合
測定範囲と精度: 温度のみを測定する場合、まず考慮すべきは測定範囲と必要な確度です。これに基づいて適切なセンサーを選択します。一般的に使用される温度センサーには熱電対と測温抵抗体があります。これらは異なる温度範囲と許容差の特性を持っています。また、熱電対を選択する場合、K型、J型、E型、T型など、測定対象の特性に応じた種類を選択することが重要です。それぞれの熱電対は異なる温度範囲と応答性を持っています。
- HIOKI データロガーLR8450で使用できる熱電対
温度・電圧・電流・ひずみの異なるパラメータの同時測定や多チャンネル測定の場合
- 測定要素の種類と数の確認:
- 要素の特定: 複数のパラメータを同時に測定する際、最初に行うべきは、測定したい要素の種類と数を明確にすることです。これには、温度、電圧、電流、ひずみなど、測定対象に応じたさまざまな要素が含まれる場合があります。
- 測定要素の多様性: 同時に複数のパラメータを監視することで、システムの包括的な理解が可能になり、より高度な分析と対応が実現します。
- データロガーの性能確認:
- 測定要素の対応性: 選択したデータロガーが、必要なすべての測定要素を同時にサポートしているかどうかを確認します。これには、各チャネルが異なるタイプのセンサーと互換性があるかどうかも含まれます。
- チャネル数の考慮: 必要なパラメータをすべてカバーするのに十分なチャネル数がデータロガーにあるかどうかを検討します。これは、データ収集の正確性と同時性に直接影響を及ぼします。
- 各要素に合わせたセンサとレンジの設定:
- 適切なセンサの選択: 測定したい各要素に適したセンサを選びます。例えば、温度測定には熱電対やRTD、電圧測定には電圧出力する変換器、ひずみ測定にはひずみゲージなどが必要です。
- レンジの設定: それぞれの要素に対して、適切な測定範囲の設定が必要です。これは、正確なデータ収集を保証し、分析の信頼性を高めるために重要です。
サンプリング
サンプリングはデータロガーでデータを収集する際の重要な側面です。サンプリング間隔は、対象となる現象の変化速度に基づいて適切に選択される必要があります。
- 変化が早いケースのサンプリング1ms間隔での測定: 例えば、1ミリ秒間隔でのサンプリングは、突発的な変化を捉えて各種センサーの出力を記録するために不可欠です。これは特に、自動車のブレーキテスト、配管のひずみ、建設機械の油圧、および産業用ロボットの動く部分のストレスと負荷を実験する際に役立ちます。
- 変化が遅いケースのサンプリング1分間隔での測定: 温度や湿度など、変化が比較的遅い現象では、1分間隔でのサンプリングが適切です。このようなケースには、部屋の温湿度差測定や建物や施設のエネルギー使用量のモニタリングが含まれます。
記録時間の設定
サンプリング間隔とチャンネル数に応じて、データロガーの記録時間を適切に設定することが重要です。
チャンネル数が多く、サンプリング間隔が数ミリ秒のように速い場合、大量のデータが生成されるため、適切な記憶容量が必要です。記録時間を長く設定するほど、より多くのメモリ容量が必要となります。
また、サンプリング間隔と測定チャンネルを考慮して、記録時間を決定します。特に長期間のモニタリングを行う場合や、データの量が非常に多くなる予想される場合は、データの保存方法や頻度にも注意が必要です。
- 測定ターゲット
測定における全体の流れ
データロガーを使用した測定プロセスは、一連のステップから構成されます。このプロセスを理解し、適切に管理することで、データの品質と信頼性を保証できます。
測定の基本ステップ
1.記録開始: データロガーのセットアップが完了し、測定を開始します。
2.データ収集: 選択されたサンプリング間隔とチャンネル設定に従って、データが収集されます。画面付きのデータロガーの場合、データロガー上でデータを確認できます。
3.記録停止: 測定の終了時にデータロガーの記録を停止します。
4.PCでのデータ解析: 収集されたデータをPCに転送し、解析を行います。
- 短期間の測定のセットアップ時の注意点
- サンプリング間隔の最適化: 短期間での変化を捉えるために、適切なサンプリング間隔を設定する必要があります。
- 記録の開始や停止を手動で操作する場合:ミリ秒単位のサンプリング間隔でデータを収集する際、目的の現象を逃さないタイミングで行うことが求められます。HIOKIのデータロガーLR8450では特定の条件や信号で、測定の開始や停止のタイミングを取る「トリガ機能」を用意しています
- 長期間の測定のセットアップ時の注意点
- メモリ容量の確認: 長期間のデータ収集では、十分なメモリ容量を確保することが重要です。
データロガーの活用事例
電子機器内の部品の電流と温度測定
電子機器に搭載されているスイッチング電源は、商用のAC電源から低圧のDC電源に高効率に変換する必要があります。高効率の電源にするには、できるだけ熱損失を抑えるマネジメントの必要があります。発熱する熱エネルギーは、エネルギーの損失に直結するため、熱による損失を把握することで、製品の消費電力を削減する対策ができます。
例えば、電気機器内の部品の発熱の多くは、その部品に大きな電流が流れることによって起こります。電子機器の動作中において、部品の温度変化をデータロガーで記録し、同時に消費電力をパワーメータで測定することで、動作状態の温度と電力の因果関係がわかります。そのデータから回路内の電流を抑えて発熱量を低減させるといった対策が可能になります。
HIOKIの提案
多点の温度データ収集と電源装置周辺の電流を同時に記録
HIOKIのデータロガー LR8450 は、各種測定ユニットを自在に組み合わせできます。チャネルの拡張性および、電流モジュールと電流センサーと組み合わせた電流入力により、開発製品の温度と電流を長時間にわたり記録できる理想的なツールです。
詳しい情報については、以下のリンクをご覧ください。
自動車の車両全体のデータ取得
自動車の評価には、異なる箇所での測定データが必要です。車両のフロント部分にあるヒューズボックス、荷室内の温度、エンジンルームの廃熱、ボディーやシャフトの剛性など、複数の離れた箇所での測定が含まれます。しかし、これらのデータを同時に取得しようとすると、配線が複雑になる懸念があります。
HIOKIの提案
HIOKIのデータロガー LR8450-01は無線入力ユニットをサポートしています。
無線入力ユニットはバッテリー駆動可能な独立した測定ユニットです。各測定ユニットを測定対象の近くに設置し、測定したデータを無線通信でデータロガー本体に転送できます。これにより複雑な配線を削減することができ作業効率が向上、さらに断線やノイズによるデータ損失のリスクが低減します。
このデータロガーで車両全体のデータ取得をすることで、EVの電力マネジメントに貢献する計測を実現します。
詳細情報は下記のリンクからご覧ください。
HIOKIデータロガーが選ばれる理由
HIOKIのデータロガーは、その独自の特徴と利点を通じて、幅広い用途において高い効率と信頼性を提供します。
画面付きデータロガーの利点
リアルタイムデータの表示
HIOKIのデータロガーが提供するリアルタイムのデータ表示機能は、測定中のデータ分析と意思決定において極めて重要です。この機能により、ユーザーはデータの傾向をすぐに把握し、必要に応じて測定条件の調整やプロセスの最適化を行うことができます。また、測定中に予期しない事態や異常が発生した際、HIOKIのデータロガーはこれを迅速に識別し、ユーザーに通知します。問題の早期解決や潜在的なリスクの回避が可能となり、測定の信頼性が大幅に向上します。
さらに、複数のチャンネルからの波形と数値を同時に画面に表示することができます。異なるセンサーからのデータを一目で比較し、各チャンネルのパフォーマンスをリアルタイムで評価することが可能です。
設定の簡単操作
HIOKIのデータロガーは、ユーザーフレンドリーな操作インターフェースを備えています。ユーザーはサンプリング間隔、測定範囲、アラーム設定などの重要な設定を簡単に行うことができます。特に、測定条件が頻繁に変更される、フィールドでの調整や実験プロセスのおいて大きな利点を提供します。これにより、変化する環境条件や測定要件に柔軟に対応することが可能になります。
データ記録用の専用PCが不要
HIOKIのデータロガー、特にLR8450-01は、専用PCが不要な一体型ソリューションを提供します。データの設定、収集、分析を1台のデバイスで完結することができ、使用する際は追加のハードウェアやソフトウェアを用意する手間を省くことができます。
また軽量でコンパクトなデータロガーは、現場への設置や移動が簡単であり、作業の効率化に貢献します。
無線式の測定ユニット
複数箇所への分散設置
無線式測定ユニットを使用することで、分散した複数箇所の測定対象に対して、ケーブルの配線や有線接続の制約なしにデータ収集を行うことができます。この柔軟性は、特に複数の測定ポイントを持つ環境において非常に有効です。LR8450-01は、それぞれの無線式測定ユニットからの多チャンネルデータを1台のデータロガー本体で収集し、管理することができます。これにより、同じ時系列でのデータ管理と分析が可能となり、効率的なデータ収集が実現します。
移動と拡張の容易さ
設置場所の柔軟性: 無線機能により、データロガーの設置場所を自由に選べます。設置場所の変更や拡張が容易になり、特に動的なテスト環境や変化する研究条件に対応する際に便利です。テストラボやコントロール室などがその例にとしてあります。壁面で区切られた試験環境においても、無線機能を利用することで、測定ケーブルを通すための追加工事が不要となります。設置の手間とコストを削減し、スムーズな測定の開始が可能です。
- HIOKI データロガー LR8450-01無線式の測定ユニットの設置イメージ
追加機能
予兆保全(警報機能)
システムやプロセスが異常な状態になった際に、データロガーは使用者に通知し、問題の早期検出を可能にします。重大な故障やダウンタイムを防ぐことができ、生産ラインの機会損失や修理費などのコストを削減することができます。
具体例:
装置の温度を監視して、高温になったら装置を止めたい場合
温度が重要なパラメーターである装置において、設定された高温のしきい値に達した場合、データロガーは警報信号を出力することができます。警報出力は、装置に警報発生の伝達および警告灯の制御に使用可能です。
遠隔操作の活用
HTTPサーバ機能
HIOKIのデータロガーLR8450は、オフィスのPCとLAN接続して制御できます。標準ブラウザを使用して、遠隔地から測定の開始・停止や波形のリアルタイム確認が可能です。
GENNECT Cloud の活用
LR8450 で計測したデータは Gennect Cloud に転送され、各社のサーバーで管理されます。これにより、複数のチームや部門間でのデータ共有やリモートアクセスが容易になり、業務の効率化につながります。さらに、データのバックアップも可能なので、外部からのインシデントにも強いです。
関連製品
まとめ
本記事を通して、データロガーの多様な使用法とその利点について詳しく探究しました。データロガーは、単体部品の温度測定から電圧、電流、温度、ひずみなど、さまざまなパラメータの同時測定に至るまで、幅広い用途に対応可能な多目的ツールです。特に、電子機器の開発では、消費電流と温度の監視を通じてエネルギー損失の特定が重要となり、EVなどの電気自動車の開発では、車両全体の電力マネジメントにおいて不可欠な役割を果たします。
HIOKIのデータロガーは、その高い汎用性と信頼性で、このような要求に応えてきました。それぞれのアプリケーションコンテンツから、業務効率の最適化につながるきっかけを発見しましょう。