リチウムイオン電池におけるナイキストプロットとは?
ナイキストプロット(Cole-Coleプロット)とは?
ナイキストプロットとは、複数の周波数で測定したインピーダンス値をプロットしたグラフの1つです。インピーダンスは、抵抗成分とリアクタンス成分を含むパラメーターです。
図1:リチウムイオン電池のナイキストプロット例
インピーダンスの測定法とは?
これは交流信号を印加してインピーダンスを測定する方法です。バッテリーのインピーダンスを測定する場合、交流信号は一般的に1 kHzの固定周波数です。周波数をスイープしながらインピーダンスを測定する方法もあります。周波数をスイープして測定することは電気化学インピーダンス法とも言います。この方法はバッテリーを安全かつ分解せず、バッテリーの中身の状態を知ることができます。
バッテリー全般の内部抵抗は大きく分けて、以下の3つに分けられます。
1. 電解液抵抗
2. 反応抵抗
3. 拡散抵抗
図2に示すように、周波数帯によってインピーダンスを支配する物理現象が異なっています。たとえば、高周波 (~1 kHz)では電解液中のイオン移動、低周波 (<1 Hz) ではイオンの電極内拡散、中間周波数 (1 Hz – 数百Hz) ではイオンの電荷授受反応、といった現象がインピーダンスに主に寄与しています。
つまり、ナイキストプロットを詳しく解析することで、バッテリーの各部分で生じている現象をそれぞれ評価することができます。
図2:ナイキストプロットとバッテリーの内部抵抗との関係性の例
代表的な解析手法として、図 3 のような等価回路モデルを使用した等価回路解析が知られています。ここでは、バッテリー内部で生じている各現象がそれぞれ異なる等価回路素子でモデリングされています。解析から得られる各素子の値は、その素子が代表する物理現象の特性を表す値であると考えることができます。
図3:ナイキストプロットと等価回路モデルの例
用途
1. 電池の劣化具合の確認
図4に示すように新品と劣化したリチウムイオン電池では、反応抵抗値に大きな違いがあります。低温度での充放電、深い充放電(SOC:0% ⇄ 100%)を繰り返すような条件では劣化が起こりやすいです。電極反応部分の劣化具合は反応抵抗としてグラフに現れます。
図4:新品と劣化したリチウムイオン電池の測定データをナイキストプロットで比較
2. 電池の不良要因の切り分け
多点周波数での交流インピーダンス測定を実施することでバッテリーセルの不良要因を切り分けることができます。
例えば、R1が大きい場合:電解液濃度の低下や電極溶接部の不良が考えられます。
R2が大きい場合:電極製造工程での不良、電極界面の電極反応の不良が考えられます。
HIOKIが提案するソリューション
測定器
| 製品形名 | BT4560-50 | BT4560-60 | IM3590 | IM3536-01+9268-10 |
|---|---|---|---|---|
| 使用用途 | セル生産ライン向け | 研究開発向け | 研究開発向け | 研究開発向け |
| 適切な電池の種類 | 液体電解質リチウムイオン電池 固体電解質電池 | 液体電解質リチウムイオン電池 固体電解質電池 | 固体電解質電池 | 固体電解質電池 |
| 測定可能な電池電圧 | 最大5 V | 最大5 V | 最大5 V | 最大10 V |
| 周波数範囲 | 0.01 Hz〜1050 Hz | 0.01 Hz〜10.00 kHz | 1 mHz〜200 kHz | 4 Hz〜10 MHz |
多点測定と評価
SW1001およびSW1002は、バッテリー向け各種測定器との組み合わせにより、多チャンネル測定ができます。BT4560シリーズまたはIM3590と組み合わせることで、多点のNyquistプロット測定に使用できます。

持続可能な社会の実現に、高品質な電池の開発と生産は必要不可欠なものとなっています。HIOKI はバッテリーの計測においてさまざまなソリューションを提案します。






