変圧器の試験方法

変圧器の試験方法や測定のポイントをご紹介

概要

変圧器は電気設備や電気機器の電源回路の中でも非常に重要な機器です。万一故障などがあると、使用企業に大きな損害を与えるおそれがあります。そのような事態にならないために、開発段階での評価測定や製造段階でしっかりと試験を行ったり、定期的な試験や点検により保全を行ったりする必要があるでしょう。
ここでは、一般的によく行われる変圧器の評価測定や試験方法について紹介します。

変圧器とは

変圧器は交流電圧の降圧や昇圧など、電圧を変えるために利用されます。また、絶縁の役割も果たします。後者の役割では、電気機器内部の電源回路で、入力側と出力側を分離、入力側の電気が直接出力側に流れることを防ぎ、電気機器の使用者を保護します。

みなさんの身近な例としては、海外旅行に行くときに使う小型の変圧器や、街中の電柱の上に取り付けられているバケツのような形状の変圧器がそれにあたります。

変圧器は、高電圧から低電圧まで施設で必要な負荷に合わせて、電気を使いやすい電圧に変換してくれるのです。「それぞれに使いやすい電圧で最初から送電すればいいのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、電圧が低い状態で電線を通した送電を行うと、送電損失がかなり発生してしまいます。送電損失をできるだけ増やさないために、発電所は電気を高圧な状態にして電流を抑えて送電しています。

基本的な変圧器の評価試験

変圧器の基本的な評価パラメータとしては、次のようなものがあります。

1次インダクタンス(L1)、2次インダクタンス(L2)測定

1次側、2次側に測定器を直接接続して、1次インダクタンスや2次インダクタンスを測定します。これらを測定する場合には、ほかの巻線はすべて開放状態にしておきます。

漏洩インダクタンス測定

理想的な変圧器では、出力で短絡すると入力も短絡するのですが、出力が短絡しても漏洩インダクタンスが残ります。
漏洩インダクタンスは、2次側を短絡させて、1次側のインダクタンスを測定することにより得ることができます。

巻線間容量

1次側、2次側の間の巻き線容量を測定する試験。各巻き線片方ずつ測定器に接続することで測定できます。

相互インダクタンス測定

同相直列・逆相直列接続にしてインダクタンス測定を行い、「M=(La-Lo)/4」の数式を用いて算出できます。

巻数比測定

2次側に抵抗Rを接続して、1次側でインピーダンス値 Z を測定することで、近似値を求めることが可能です。「N=√(R/Z)」で算出することができます。

変圧器の温度上昇試験

温度上昇試験は、「定格運転状態において規定値内の温度上昇であるか」を確認するための試験です。温度の測定は、変圧器の油や巻き線などの温度を測定します。測定方法は主に次の3つです。

実負荷法

定格負荷の状態での温度上昇試験です。変圧器に負荷をかけて行います。大容量の変圧器で行うのは現実的ではありません。そのため、この方法は小容量の変圧器において行われるものです。

返還負荷法

無負荷損・負荷損の電源容量を個別に供給して測定する方法です。試験に使用される電源容量が少ないことから、電力用などの大容量変圧器でも試験を行うことができます。注意点としては、同一定格の変圧器が2台以上必要であり、さらに測定結果に対して温度補正が必要です。

等価負荷法

片方の巻線を短絡させて、定格周波数の電源で他方の巻き線に電流を流し、無負荷損・負荷損の和に等しい損失を流したときの温度上昇を測定する方法です。全損失を負荷損として供給するため、値を把握しておく必要があるため注意しましょう。また、返還負荷法同様に温度補正などを行う必要があります。

その他に、抵抗測定による温度上昇試験があります。測定した抵抗値と周囲温度から、上昇温度に換算して行います。この機能を使うと、巻線の抵抗値の変化から通電停止時のモータやコイル内部の温度などを推定することができます。

  • 抵抗計
    温度換算機能(ΔT)搭載

変圧器のその他の試験

先述した試験方法以外にも、変圧器の試験は多岐にわたります。変圧器以外でもよく利用されるような耐電圧試験や絶縁抵抗試験などのほかに、耐震性・対候性・耐熱性・耐寒性・耐湿性の試験などさまざまです。また、変圧器やモーターなどの省エネ評価指標の一つにもなっている無負荷損測定などもあります。

HIOKIのパワーメータ PW3337PW3336 は、低力率でも力率の影響0.1%以下と小さいため、低力率時の有効電力を高確度で測定できます。

  • 変圧器の無負荷損測定

まとめ

変圧器は発電所から送られてきた高圧な電気を、マンションやビル、工場設備、そして電気機器などで使う際に必要な電圧に変換してくれる設備です。
変圧器の試験方法は非常にたくさんあります。今回は基本的な試験についてご紹介しました。変圧器の試験が必要な際には、本ページでご紹介した試験方法を参考にしてみてください。

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