オシロスコープとパワーアナライザの違いとは?
オシロスコープを超えた正確な電力測定
電力測定は、電気システムの評価において不可欠な要素です。オシロスコープは波形観測やデバッグ、ノイズ解析に広く利用されていますが、信頼性のある電力解析に求められる精度を提供するための設計ではありません。効率評価、規格適合性の確認、製品品質の保証といった場面では、正確な測定が不可欠です。本記事では、オシロスコープによる電力測定の限界を整理し、今日の厳しい試験環境において必要とされる精度と信頼性を実現するための代替手法をご紹介します。
図1 オシロスコープ
8チャンネルオシロスコープでインバータ効率を測定する場合
よくある測定構成として、DC入力・三相AC出力のインバータを考えてみましょう。
必要なチャンネル数:合計8チャネル
- DC電圧 ×1
- DC電流 ×1
- AC電圧 ×3
- AC電流 ×3
必要な機材:
- 8chオシロスコープ
- 高電圧差動プローブ ×4
- AC/DC電流プローブ(電源付き) ×4
- PCおよび波形解析ソフトウェア
この構成は、大がかりで高価なだけでなく、配線や設定が複雑でミスも起こりやすくなります。
さらに、高周波成分、スイッチングノイズ、周波数変動などの影響により、同期や解析もさらに困難になります。
図2 DCから三相AC構成の複雑なインバータ測定構成(オシロスコープ使用時)
より良い選択肢: パワーアナライザでシンプルかつ信頼性の高い測定
この複雑な測定を、HIOKI パワーアナライザ PW4001ならシンプルに解決できます。
- 電圧4チャネル+電流4チャネル=電力4チャネルで測定
- 差動プローブ不要、高電圧を直接入力可能
- クランプ式センサーで安全かつ高確度な電流測定
- 効率、力率、電力、エネルギー、高調波をリアルタイムで表示
- 電力パラメータの演算プログラムが不要なので、接続すればその場ですぐに測定できる
確度と分解能:スペックの差が証明
高性能オシロスコープとPW4001の測定能力を比較してみましょう。
項目 | オシロスコープ | HIOKI PW4001 |
---|---|---|
分解能 | 12 bit〜14 bit | 16 bit |
電力基本確度 | 非公開 (5% of reading程度) | (基本確度±0.03% of reading+センサ確度) |
電圧基本確度 | ±2% of reading程度 | ±0.03% of reading |
電流プローブ基本確度 | ±1% of reading程度 | ±0.07% of reading*1 (センサによる) |
位相確度 | 非公開が多い | 自動補正あり |
- *1:CT6833、CT67833-01、CT6834、CT6834-01使用時
オシロスコープの精度では、5%以下の効率改善を見逃すリスクがあります。
0.1%の違いが重要なインバータ効率測定においては、PW4001が明らかに優位です。
波形も見たいですか?もちろん実現できます
PW4001は、オシロスコープのように波形もサンプリングします。 サンプリングレート2.5 MHz、アナログ帯域幅600 kHzにより、PWM信号も正確に捉えることができます。
- トリガ付き波形キャプチャー(電圧変動など特定イベント発生時の波形を保存)
- 大容量波形ストレージ(10 kS/s 500秒、100 kS/s 50秒)
- 波形+数値の同時表示
- レベル&イベントトリガーによる過渡波形捕捉
- PWM波形の拡大表示
- インバータ電流の高調波解析
- 波形付きインバータ効率測定値
図3 PW4001による多様な測定表示
信号処理:パワーアナライザの隠れた強み
PW4001は、オシロスコープとは異なり、入力信号を5つの処理パスに分岐させ、目的ごとに最適な演算をリアルタイムに実行します。これにより、煩雑な設定をすることなく常に高確度な測定ができます。
5つのAUTO機能で再現性のある高精度測定を実現
- 適切なレンジ設定(AUTOレンジ)
- 確実な電流センサーの位相補正(AUTO位相補正)
- 安定したゼロクロス検出(AUTOゼロクロスフィルター)
- 折り返し誤差のない高調波解析(AUTOアンチエイリアシング処理)
- モーターなどの可変周波数機器の電力変動を確実に補足(AUTOデータ更新)
- *:*AAF(アンチエイリアシングフィルター)
サンプリングや間引き時に発生する折り返し誤差を防止するフィルター.
AUTO データ更新のイメージ図
図4 5つのAUTO機能で再現性のある高精度測定を実現
まとめ
「オシロスコープで十分」と思っている方も多いかもしれません。
しかし、その電力値は本当に信頼できますか?
確度、法規対応、再現性が重要な場面では、使用する機器こそが結果を左右します。
オシロスコープは、波形観測、ノイズ解析、デバッグに最適な道具です。しかし、電力値、効率、高調波、エネルギーといった信頼できる「数値」が必要なとき、パワーアナライザは「必需品」です。高確度で信頼性の高い電力測定を、HIOKI パワーアナライザ PW4001で始めてみませんか?
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