太陽光発電システムにおける電圧上昇の理由と予想される過電圧
持続可能な社会の実現に向け、自然エネルギーを活用した発電システムが注目されています。その中でも、太陽光の活用が進んでいます。
太陽光発電システムが高電圧化している理由
送電時のエネルギー損失を削減
1000 Vシステムから1500 Vシステムに切り替えることで、発電効率を向上させることができます。電流が大きいと送電時のエネルギー損失が大きくなります。電圧を上げ、電流を小さくすると、エネルギー損失を減らすことができます。そのため、損失を最小限に抑え、発電した電気エネルギーを有効に活用するために、太陽光発電システムは高圧化しています。
コスト
1500 V の発電システムは、1000 Vの発電システム比べてコストが少なくてすみます。ストリングの数が約2/3になるため、接続箱やインバーターの数、ケーブルの長さを削減できます。
図1:1000 kWの太陽光発電設備における1000 Vシステムと1500 Vシステムの例
これまでは1000 Vのシステムが主流でしたが、コスト削減のため、1500 Vのシステムも増えてきています。
PVモジュールのカテゴリ分類について
太陽光発電システムの高圧化に伴い、過渡過電圧も高くなります。メンテナンス作業における危険性が高くなるため、安全性への配慮が重要です。安全規格EN 61010シリーズでは、測定箇所の対地間定格電圧や電流容量および測定箇所に生じる過渡過電圧に基づいて、CAT II、CAT III、CAT IVに分類しています。図2と表1に測定箇所と測定カテゴリを示します。
また、PVモジュールの安全適格性確認に関する規格 IEC 61730-1によると、PVモジュールは過電圧カテゴリ III として扱われます。そのため、PVモジュールのメンテナンスには、測定カテゴリ IIIの測定器が必要になります。
図2:測定箇所と測定カテゴリ
測定カテゴリ | 説明 |
---|---|
CAT II | 電源コンコンセントに直接接続する機器の電源プラグから機器の電源回路まで |
CAT III | 分電盤から電力を直接取り込む機器(固定設備など)の電源配線と電源回路、および分電盤からコンセントの裏側の配線端子までの配電路 |
CAT IV | 建造物への引き込み電路、引込口から電力量メータおよび分電盤までの電路 |
予想される過渡過電圧について
工場などの電力ラインでは、電源電圧の10倍程度の過渡的な過電圧(インパルス状の電圧)を含むことがあります。測定器は、測定箇所の過渡過電圧をあらかじめ予測して、その過渡過電圧にも耐えるような安全設計が必要です。表2は対地間電圧と測定カテゴリによる過渡過電圧の規定です。CAT IIIに分類された1500 Vの太陽光システムの過渡過電圧は10,000 Vとなります。
対地間電圧(V) | 過渡過電圧の値(V) | ||
---|---|---|---|
CAT II | CAT III | CAT IV | |
2500 | 4000 | 6000 | |
4000 | 6000 | 8000 | |
6000 | 8000 | 12000 | |
8000 | 10000 | 15000 | |
12000 | 15000 | 18000 |
HIOKIが提案するソリューション
現在の太陽光発電設備では1500 Vのシステムが普及しつつありますが、今後システムのさらなる高効率化・大規模化が進むと、より高電圧に対応した計測器が必要になります。 そうした近い将来を見据え、CAT Ⅲ 2000 Vの対応製品として、HIOKIは2000 Vの測定に対応した直流高電圧プローブP2010を提供します。過渡過電圧が15,000 Vあっても安全に測定できるように設計されている製品です。
P2010の特長
- 1.P2010は対応するHIOKIのクランプメーターやデジタルマルチメーターに接続するだけでCAT III 2000Vまでの高電圧測定ができます。
- 2.テストリードの先端の直径がφ2.6 mmと細いため、ヒューズ式開閉器,カバー付きの端子へのプロービングが容易になります。
P2010対応機種のご紹介
P2010に対応するHIOKIのクランプメーターとデジタルマルチメーターは、P2010で減衰した電圧を補正・換算し,電圧値を直読することができる機能を搭載しています。
- AC/DCクランプメータ CM4373-50(2000 A)
- 600Aと2000Aの2レンジで、小規模の太陽光発電設備からメガソーラー規模のシステムまで幅広く測定できます。
- AC/DCクランプメータ CM4375-50(1000 A)
- スリムな先端形状で、狭い場所や混雑している接続箱の中でもスムーズに電流を測定できます。
- AC/DC自動判別機能により、レンジ切替なしで交流と直流の両方で電流と電圧を測定できます。これにより、作業効率がさらに向上します。
- デジタルマルチメータ DT4261
- IP54対応の高い防じん防水性能で、屋外での使用にも最適です。
- 誤挿入防止シャッターによりテストリードの誤挿入を防止し、安全で確実な測定できるデジタルマルチメーターです。
- GENNECT Crossアプリと計測器を接続
- 測定値を無線で送信することで、紙への書込みやPC入力の際に起こっていた転記ミスを防止し、省人化と作業時間の削減ができます。
- コンパレータ機能で測定値のPASS・FAILを判断し、作業効率を向上させることができます。
より大規模で効率的なシステムが導入されるにつれ、今後太陽光発電システムがさらに高電圧化することが予想されています。HIOKIは安全かつ効率的に測定できるソリューションを提案し続けます。