太陽電池システムにおけるストリング回路電流検査

図1は発電領域のIV曲線を示しています。IV曲線とは、太陽電池の電流-電圧特性を測定し、縦軸に電流、横軸に電圧をとったグラフ上に描かれた曲線です。得られたIV曲線から発電の異常を見つけ出すことができます。IV曲線の重要な測定要素をいくつか紹介します。

図1

  • 開放電圧(Voc):太陽電池が電流を流していない状態の電圧
  • 短絡電流(Isc):太陽電池の負極と正極を短絡したときに流れる電流
  • 最大出力動作点(Pmax):IV曲線上の電流と電圧の積が最大となる点。インバーターは太陽電池が常にこの点で動作するよう制御されます。
  • 最大出力動作電圧(Vpm):最大動作点における電圧
  • 最大出力動作電流(Ipm):最大動作点における電流

IEC62446-1規格によるストリング電流測定

IEC62446-1の規格では太陽光発電システムのストリング電流測定について説明しています。この試験は、太陽電池のストリングの機能を確認し、重大な問題がないことを確認します。PVストリングの電流測定は短絡電流試験と動作電流試験があります。

ストリング短絡電流試験

ストリングの短絡電流Iscはストリングの正極端子と負極端子を短絡させたときに流れる電流で、ストリングの最大の電流値になります。

ソーラーパネルがインバーターやソーラー充電コントローラーなどの機器に接続した時に、パネルが対応できる電流の容量を示すのがIsc値です。アークが飛ぶおそれがありますので、デジタルマルチメーターの電流端子を使用した直接測定は推奨しません。

AC/DCクランプメーターで太陽電池の短絡電流を測定することができます。ただし、太陽電池は日射があるときには測定電流が高くなし、多数のセルが直列に接続されている場合は電圧が高くなるため、危険な場合があります。太陽電池を短絡するには、大容量の遮断器を用いるなど、適切な装置を用いる必要があります。

バイパスダイオードテスターFT4310を使用すると、バイパスダイオードの開放検査とあわせて遮断器不要で短絡電流を測定することができます。

接続箱のストリングで簡単に検査ができるため、 屋根に登る必要がなく、作業効率が格段に向上します。ただし測定する前に、測定対象となるストリングを系統連系から切断する必要があります。

ストリング動作電流試験

ストリングの動作電流の測定は、ストリングの点検時に実施されます。動作電流を測定することで、ストリングが動作状態にあるかを確認することができます。同じ枚数、同じ種類のモジュールで構成された複数のストリングからなるシステムでは、ストリングの電流値はほぼ同じになります。ストリングに異常が発生すると、他のストリングと比較して電流値が大きく異なります。各ストリングの電流値を比較することで、異常を検出することができます。

HIOKIのAC/DCクランプメーターにワイヤレスアダプタを装着すると、Bluetooth通信が可能になります。無償アプリケーションのGENNECT Crossを使用すると、コンパレーター機能で測定結果を判定することができます。この機能によりストリング動作電流を簡単に判定することができます。

また、インバーター動作時の最大出力動作点であるIpmの値も重要です。この値もクランプメーターで測定できます。

ストリング電流測定に使用する測定器

測定器Isc測定動作電流・Ipm測定最大測定可能電流電流の最小分解能最大測定可能電圧直流高電圧プローブ対応Bluetooth®通信
バイパスダイオードテスタ FT4310-15 A0.1A1000 V-
AC/DC クランプメータ CM4371-50600 A0.01A1000 V*
AC/DC クランプメータ CM4375-501000 A0.1A1000 V*○
AC/DC クランプメータ CM4373-502000 A0.1A1000 V*

クランプメーターは電流の測定に加え、テストリードを使って電圧を測定できます。開放電圧(Voc)とインバータの最大出力動作点における電圧(Vpm)を簡単に測定できます。直流高電圧プローブP2010を使用すると、DC2000Vまで測定できます。これを使用すれば、高電圧の太陽光発電システムも簡単に測定できます。また、上記の機器はBluetooth®を使用して測定結果をモバイル端末に送信できます。これにより、報告書の作成に要する時間と労力を削減できます。

  • Bluetooth®ワードマーク およびロゴはBluetooth SIG inc.の登録商標であり、日置電機株式会社はライセンスに基づき使用しています。

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