なぜバッテリーの内部抵抗を測定するか?
バッテリーの内部抵抗を測定する目的は2つあります。
バッテリーの内部抵抗とは?
内部抵抗とは、バッテリーが電流を流す性能を示すパラメータのひとつです。
内部抵抗の値が低いとき、バッテリーは電流をたくさん流すことができます。内部抵抗の値が高くなると、バッテリーは電流を少ししか流すことができません。
図1は、バッテリーの内部構成の例です。バッテリーは、内部抵抗と出力電流より、バッテリー電圧が決まります。例えば、バッテリーの起電力, E0=10 Vがあるとします。バッテリーの内部抵抗, RDCは1 Ω, 負荷, Rは9 Ωとするとバッテリー電圧は9 Vになります。
電池の内部抵抗は、ゼロであることが理想的です。しかし、現実は図1に示す通り、必ず内部抵抗が存在します。内部抵抗が高くなるほど、エネルギーの損失が大きくなります。また、エネルギー損失時には、“熱”が発生します。この熱によって電池が劣化します。
図1:バッテリーの内部構成
バッテリー生産時の品質検査
しかし、内部抵抗が何Ωだったらバッテリーの品質がいいと判断できるでしょうか?
実際のところ、答えはバッテリーの種類によって違います。
図2に示すように、素材、構造、サイズ、電圧などにより、内部抵抗の基準値は種類ごとに違います。図 3 は、内部抵抗が数 mΩ のバッテリーもあれば、1 kΩ を超えるバッテリーもあることを示しています。
- 図2:さまざまな種類のバッテリーの例
- バッテリーの内部抵抗と電圧
バッテリーの内部抵抗による判定をすることで、均質で仕様通りの品質を実現できます。内部抵抗はバッテリーの品質を維持するために重要な役割を持っています。
セル生産工場で生産されたセルは出荷検査を経て、モジュールの生産工場へと輸送されます。時間の経過や輸送時の振動などが原因で不良品が発生するおそれがあるため、受入検査を実施し、モジュールやパックへと組み立てられます。
電池パック内の各セルの内部抵抗が均等であることも重要です。内部抵抗が大きなセルや劣化が進んだセルがあると、そのセルがボトルネックとなって電池パックの容量が制限されます。全セルが均等な内部抵抗を持ち、かつ均等に劣化していくようにセルを選定することで電池パックの品質が向上します。
バッテリーの内部抵抗と電圧
バッテリー運用時のメンテナンス
内部抵抗を測定する目的の二つめは、バッテリー運用時のメンテナンスです。
バッテリーの内部抵抗は、使用するにつれて徐々に増加していきます。
バッテリーの電力は、電極内部の化学反応により得られます。しかし長期的に使用した場合、電極内部に錆や腐食が生じるため化学反応は鈍くなります。化学反応が鈍くなることで、電池の内部抵抗は増大します。
バックアップ用の無停電電源装置(UPS)では、いざというときバッテリーが能力を発揮することが重要です。
定期的にバッテリーの内部抵抗を測定することで、劣化したバッテリーを排除できます。
バッテリーの内部抵抗は、生産時の品質検査と運用時のメンテナンスに重要なパラメーターです。
適切に測定することで、バッテリーの性能を最大限に発揮しましょう。