バッテリー診断時間が約60%も短縮
バッテリー診断時間が約60%も短縮
素早く正確な測定で作業負荷が大きく軽減
今回のお客様
設備の保守・メンテナンスサービスを営むV社。通信事業者が運営する通信設備や、IT系サービス業者が企業向けに運営するデータセンタなど、無停止が求められる設備に対する、24時間365日対応の保守、定期的なメンテナンスを請け負っています。
導入前の経緯
非常用電源に使われているバッテリーの劣化を、効率良く正確に診断したい
企業の機密情報を預かるデータセンタや、通信事業者が運営する通信設備、病院・銀行など社会のライフラインは、障害によって電源が使用できない事態を避けなければなりません。そのため、予期せぬ電源障害への備えとして、UPS(無停電電源装置)を導入しています。ただ、UPSのバッテリーに使用されることが多い鉛蓄電池は、充放電を繰り返すことで劣化します。いざというとき確実に電気を供給できるようにするため、日頃からバッテリーの劣化状態を管理することが必要です。
企業に代わって設備の保守・メンテナンス業務を請け負うV社では、通信事業者や病院・銀行のサービスが何らかの障害で停止しないよう、日頃から設備の保全作業を行っています。保全作業の中には、UPSのバッテリーを点検する作業も含まれますが、この作業に関していくつかの問題を抱えていました。
まず挙がるのは、作業効率の悪さです。顧客の多くが次々とバッテリー数を増やしていて、200台以上使用している現場もあります。バッテリーの劣化状態を知るには、一つひとつのバッテリーの内部抵抗・直流電圧を測定して、良否判定をしなければなりません。これらを定期的に実施して測定データを管理するのに、多くの時間と作業者の負荷が必要でした。
正確な測定も困難でした。設備の性質上、点検時に電源を落とすことができず、稼働状態のまま点検することが求められます。しかし、機器の稼働中はどうしてもインバーターなどからノイズが発生してしまい、正確な測定を妨げていました。加えて、ほとんどの設備で数多くのバッテリーをラックに所狭しと並べているため、奥のバッテリーを点検するには手をラック内部まで差し入れなければなりません。200台以上のバッテリー連結で数百ボルトの電圧となるため、作業者が感電する危険性がありました。
お客様がHIOKIを選んだ主な理由
バッテリー診断スピードの速さ、管理業務の簡便さなど、新型テスタを高く評価
実は、数年前までUPSのバッテリーは、バッテリメーカが定めた保証期間を過ぎると、まとめて交換するのが通例でした。通信事業者も病院・銀行も、数年ごとに多額の費用をかけてバッテリーを交換していたのです。そうした慣習に変革をもたらしたのが、HIOKIのバッテリテスタでした。
バッテリーの内部抵抗と電圧が同時に測定できるポータブル機器のおかげで、個々のバッテリーの劣化を診断できるようになり、劣化の度合いが低いバッテリーは継続使用し、劣化のしきい値を超えたバッテリーは交換するという、最適な運用管理が可能になりました。V社は早期にこのバッテリテスタを導入し、顧客に保守費用軽減を含めた改善策を提案。より良好な関係構築に寄与したことから、継続的にHIOKIのバッテリテスタを採用してきました。
そして今回、V社はさらなる作業効率向上、ミスのない測定データの管理、ノイズに左右されない正確な測定、作業者の安全性向上などを求めて新たなバッテリテスタの導入を検討。最新機種であるバッテリテスタ BT3554の導入を決めました。
BT3554は、約2秒で内部抵抗と電圧を測定できる圧倒的なスピードと、測定したデータを内部メモリに保存してパソコンへデータ転送する機能を搭載しています。また、高い耐ノイズ性があり、L字のピン型リード採用で作業者の安全性が向上します。V社はこれらの特長を高く評価したのです。
導入後の効果
バッテリー診断の作業効率化に加え、予兆保全が可能な管理体制が構築できた
BT3554は、リードを端子に接触させるだけで測定を開始し、測定値が安定したら自動的にデータを保存できます。従来製品はバッテリー1つの測定に約5.3秒かかっていましたが、BT3554は約2秒。およそ60%もバッテリー診断時間を短縮でき、V社はバッテリー診断の作業効率を大きく向上できました。
また、BT3554は高い耐ノイズ性を誇り、安定した測定が可能です。これまでUPS稼働時は、インバーターなどによるノイズの影響を受けて正確な測定が困難でしたが、現在ではスピーディーな測定が可能になりました。さらに、V社では狭い場所にあるバッテリーの測定作業を考慮して、先端がL字のピン型リードを導入。作業員の安全性が向上しました。
そして、BT3554にはBluetooth®無線技術を搭載した機種があり、GENNECT Crossというアプリをインストールしたスマートフォンやタブレットに接続することで、自動的に保存した測定データを活用して、その場でレポートを作成できます。
- GENNECT Cross
- GENNECT Cross
また、そのレポートは、すぐに事務所へ送信できます。BT3554に標準付属のパソコンアプリケーションソフト(GENNECT ONE)では、過去から現在までの測定データのトレンド把握をすることができます。
- GENNECT ONE
BT3554は、GENNECT CrossやGENNECT ONEと組み合わせることで、任意のバッテリーの過去から現在までの測定データをグラフで一覧表示でき、劣化の兆候を見つけることができます。これによって、定期的なメンテナンスでバッテリーの停止を予防する予防保全から、バッテリーが停止する兆候をとらえて優先的にメンテナンスする予兆保全へのシフトが可能になりました。ただ設備のメンテナンスを請け負うだけではなく、顧客に歓迎される付加価値を創出したいと考えていたV社では、現在バッテリー劣化に起因する設備のトラブルを未然に防ぐことに加え、メンテナンスのトータルコストを削減できるようになり、とても喜んでいます。
HIOKIでは後継機種に搭載する機能として、次に計測すべきバッテリーを音声でガイダンスする機能や、場所やバッテリー番号などのプロフィール情報と測定結果を関連付けてデータ管理する機能などを開発中です。V社は、こうした機能を搭載したバッテリテスタが発売されれば、改めて導入を検討したいと話しています。