プリント基板のストレスを評価するひずみ測定

はじめに

材料を加工する際には、必ず何らかの応力がその材料に加わります。モノづくりにおいて製品の品質を確保するためには、材料に不要な応力を加えないことが重要です。仮に応力を加える必要がある場合でも、その応力が材料の破壊につながるような加工方法は適切ではありません。このアプリケーションノートでは、適切な加工方法を模索する手段として「ひずみセンサー」を利用した測定方法について解説します。

応力に関する課題

プリント基板は一般的にシート状の材料で構成されています。特に小型のプリント基板の場合、材料効率を高めるために1枚のシートから複数の基板を作成し、1基板あたりのコストを抑える設計が採用されることが多いです。このような複数枚の基板を含むシートでは、まず部品を取り付けてはんだ付けを行い(リフロー工程)、その後の工程でシートを分割して個々の基板を完成させます。

しかし、プリント基板に部品が実装された状態で分割を行う際、基板には大小さまざまな応力が加わります。この分割工程での加工方法によっては、基板に実装された部品にもストレスがかかり、それが製品不良の原因となるおそれがあります。この課題を解決するためには、分割時に発生する応力を正確に測定し、ストレスの少ない加工方法を検討することが必要です。そこで、ひずみセンサーを用いた測定を行います。

HIOKIの応力測定のためのソリューション

「ひずみゲージ箔センサー」を使用して、プリント基板の分割工程における応力を測定します。この測定では、カッティングマシンを使用して基板を分割する際のひずみの大きさを調査します。

カッティングマシンは、作業者が手動で回転するカッターにプリント基板を送り込む形式です。基板には以下のようにひずみゲージ箔を取り付けて測定を行います。なお、今回の対象の1シートの基板には分割面に2枚の基板が含まれるため、ひずみセンサーはそれぞれの基板に2か所取り付けています。

  • 図1 2軸のひずみゲージ箔
  • 図2 使用したカッティングマシン

HIOKIの測定ソリューションの主な利点

今回の計測によりプリント基板の送りスピードを変化させることで、基板に加わる応力により発生するひずみレベルに差が生じるという結果が得られました。この結果は、送りスピードが基板の分割加工時における応力の大きさを左右する重要な要因であることを示しています。

送り速度A:201 mm/s(図3)

値はp-p値

  • CH1 Y-1: 719 µε
  • CH2 X-1: 1,162 µε
  • CH3 Y-2: 902 µε
  • CH4 X-2: 2,168 µε

結果:ひずみが小さい

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図3 Logger Utilityでの解析結果・送り速度A:201 mm/s

 

送り速度B:332 mm/s(図4)

  • CH1 Y-1: 5,142 µε
  • CH2 X-1: 4,170 µε
  • CH3 Y-2: 3,566 µε
  • CH4 X-2: 2,219 µε

結果: ひずみが大きい

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図4 Logger Utilityでの解析結果・送り速度B:332 mm/s

このような解析結果を通じて、プリント基板に加わるストレスの状態を正確に把握することができます。その結果、基板への負荷を最小限に抑えた適切な加工方法を見出すことができます。

ひずみゲージセンサーの接続

ひずみゲージセンサーは直接、A端子とC端子に接続します。(1ゲージ法、2-wire) モジュールのディップスイッチの切り替えにより内部でブリッジ回路が構成されます。


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ひずみセンサーの取り付けと切断イメージ


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計測で使用した測定器

  • メモリハイロガー LR8450
  • ひずみユニット U8554
  • ひずみゲージセンサー 2重ね配置タイプ(共和電業社製)

まとめ

今回、HIOKIメモリハイロガー LR8450と、ひずみゲージセンサーを組み合わせた物理的応力測定の方法をご紹介しました。このデータロガーで記録した計測データはSDカードなどのメディアに保存できます。また、弊社Webサイトから無償でダウンロードできるソフトウェアLogger Utilityを使用することで、さらに詳細な解析に役立てることができます。

今回の計測では、Logger Utilityの演算機能を活用し、ピーク値(p-p値)、最大値、最小値などを自動で算出しました。計測対象はプリント基板でしたが、この手法はほかの材料の加工にも応用できます。

詳しい製品の情報は、Webサイトご覧ください。 
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ソフトウェアのダウンロード

無償のアプリケーションソフト Logger Utilityは、こちらからダウンロードできます。

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