水力発電所の負荷遮断試験
負荷遮断の危険性
水力発電所における負荷遮断は、発電機の負荷(電力需要)が急減少する現象です。この負荷遮断は送電線や発電所での事故、制御システムの故障などで引き起こされます。負荷遮断が起きると発電用タービンの回転速度が急上昇し、振動や羽の破損により発電システムを損傷する危険があります。また発電を止めるために水路を急閉塞すると、水圧が急上昇し水路が破裂する危険もあります。水力発電所のタービンや水路は巨大システムであり、これらの破損は人命にかかわる重大事故につながります。このような事故を防ぐために負荷遮断試験によるシステムの信頼性の確認が必要です。
水力発電のポテンシャル
ダムは世界に約36,000基あり、水力発電のみならず洪水調節や水資源の確保に役立っています。
水力発電は発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーとして、カーボンニュートラルに貢献しています。また、太陽光発電や風力発電のように天候に左右されず、安定的な電力供給が可能です。さらに、放水量を調整することで発電量の制御ができるため、電力需要の変動に柔軟に対応します。
水力発電は、ダムや貯水池に蓄えられた水を高所から低所に流し、落差によって生じる高い水圧によってタービンを回転させます。水が持つ位置エネルギーをタービンで回転運動に変換し、発電機で電気を発生させます。
負荷遮断試験のメカニズム
発電機が一定の負荷状態から負荷を失った場合に、発電用タービンが安全に停止することを確認する試験です。この試験は、水車や水路(水圧鉄管)、調速機(ガバナー)を修理した場合や、発電機のオーバーホールを実施した際に必ず実施されます。
発電機の負荷が軽くなると、タービンの回転数が上昇するため、そのままでは危険です。その回転数の上昇を抑制するために、水路の調整バルブ(ガイドベーン)を閉じてタービンを停止させます。ただし、急激にバルブを閉じると水路の圧力が上昇して水管を損傷する危険があるため、バルブの開度を調節します。この負荷を遮断してから停止するまでのタービンの回転数や発電電圧・電流、水圧などの値を確認し、点検記録として残します。
試験方法
発電所に設置されている各種センサー(タービンの回転数、水路内の水圧、バルブの開度など)の出力をメモリハイコーダに入力します。そして、負荷を遮断した際の発電電圧や発電電流、ガバナーサーボの制御信号、各種センサーの値をメモリハイコーダで測定します。
制御信号の変化点や発電電圧が降下したタイミングで測定を開始するためにはトリガ機能が有効です。
負荷が遮断されるとタービンの回転数が上昇するため、水路の調整バルブの開度を小さくしていき、タービンの回転数を徐々に低下させます。そして、調整バルブを完全に閉じ、タービンの回転が停止するまでの一連の動作を波形として記録します。
測定した波形から、タービンの最大回転数の最大値や水圧の最大値を読取り、負荷遮断時に問題なく安全に発電を停止することを確認します。最大値や時間差の計算は数値演算機能によって簡単に、自動的に算出します。
計測器の構成例
- メモリハイコーダ MR8848
- 電圧計測 アナログユニット 8966
- 電流計測 3CH電流ユニット U8977
- 回転数計測 周波数ユニット 8970
- 圧力計測 ストレインユニット U8969
ソフトウェアのダウンロード
無償のアプリケーションソフトMR6000 Viewerは、こちらからダウンロードできます。
詳しい製品の情報は、Webサイトご覧ください。
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