EV航続距離試験 (WLTP, SAE J1634) を安全で効率的に行う方法

自動車エンジニアは、どのようにして認証試験の時間を短縮し、作業リスクを低減し、WLTP、EPA、SAE J1634の基準に準拠できるのでしょうか?
本記事では、HIOKIのパワーアナライザが、CANバスの電圧データと電流センサー入力をリアルタイムで組み合わせる革新的な測定手法を提供し、「危険な高電圧結線」や「測定後の演算」を不要にし、認証試験の効率を大幅に向上させる方法を紹介します。

 

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図1 認証試験:車両のエネルギー消費および航続距離試験

WLTP、EPAサイクル(SAE J1634)などの国際的な走行サイクル試験の役割

WLTP(Worldwide Harmonized Light-duty Vehicles Test Procedure)や米国環境保護庁(EPA)が採用するSAE J1634 (Battery Electric Vehicle Energy Consumption and Range Test Procedure)などの認証試験は、車両のエネルギー消費と航続距離を評価するための重要な枠組みです。
これらの試験の目的は、公平で信頼性の高い車両性能データを提供することです。これにより、エンドユーザーはブランドや地域を超えて車両の性能を正確に評価・比較することができます。こうしたテストの信頼性は、それぞれの基準で定義される厳密な測定要件に支えられています。

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図2 WLTPテストサイクル

車両試験における電圧・電流測定の課題

従来、バッテリの電圧データを取得するためには、車両の高電圧ラインに物理的に電圧コードを接続する必要があり、開発チームにとって大きなリスクを伴っていました。

  • 時間が掛かるセットアップ:
    電圧測定の際は、慎重な作業と保護対策が必要です。また、電流測定に関しては、クランプセンサーをボンネット内の狭い場所に取り付ける必要があり、測定準備に時間を要していました。
  • 安全リスク:
    誤接続や誤作業は車両バッテリーを損傷させ、最悪の場合は感電事故を引き起こすおそれがあります。
  • ポストプロセス負担:
    試験システムや試験方法によっては、別々に取得した電流データと電圧データを使って、試験者が測定後に電力計算を行う必要があります。

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図3 パワーアナライザ PW4001とAC/DCカレントプローブ CT6834

パワーアナライザ PW4001と小型高精度電流センサーによる革新

HIOKIのパワーアナライザ PW4001は、CANバスから電圧データを直接取得し、電流センサーの測定値とリアルタイムで組み合わせるという新しい機能を搭載しています。

  • リアルタイム電力計算:
    測定後の電力演算処理が不要
  • 直接的な電力データ出力:
    テストシステムは電力測定値を直接取得できる
  • 高電圧結線不要:
    電圧データはCAN経由で送信され、車両の高電圧ラインに物理的に接続する必要がない

さらにHIOKIの自動車試験専用に設計された小型高精度クランプ型電流センサーにも優れた特長があります。

  • 狭い空間でも片手で簡単に取り付けできる
  • 低電流レベルでも優れた精度を提供
  • セットアップの煩雑さを減らし、エンジニアの準備時間を短縮

PW4001システムは、シームレスで効率的かつユーザーフレンドリーな測定体験を提供します。



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図4 新しい車両の電力消費試験:CANバス電圧データと電流センサー

実用的な利点とコスト削減

コスト削減やテストの簡素化など、これらの実用的な利点は、信頼性の高いテスト結果を得られるだけでなく、テストエンジニアにとっても大きな価値となります。

  • 安全性の向上
  • セットアップ時間の短縮
  • センサー設置の容易さ
  • データの後処理が不要
  • テスト準備時間を短縮

厳しい確度基準を満たす:動作温度範囲-20°C〜+50°C

試験のセットアップにかかる時間を短縮するだけでなく、HIOKIのPW4001と電流センサーは測定確度も両立しています。WLTP、SAE J1634で定義された確度要件を満たしています。

  • 電圧確度:±0.3% of range or ±1% of reading
  • 電流確度:±0.3% of range or ±1% of reading
  • エネルギー(電力積算)確度:IEC 62053-21 Class1相当

400 Vアーキテクチャーまたは800 Vアーキテクチャーのどちらの車両に対しても、PW4001は信頼性の高いデータを提供します。


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図5 WLTP/SAE J1634要件を満たす組み合わせ確度

柔軟な拡張性

車両の消費電力を詳細に理解するためには、規格で要求される測定個所だけでなく、多くのポイントで電流または電力を測定する必要があります。PW4001は、この要件に対応するため、同期機能を備えています。最大8台のPW4001ユニットをリンクさせ、測定の開始、停止、および記録間隔を正確に同期させることができます。これにより、時間同期やデータ整合性を損なうことなく、複雑な車両の電気システムを包括的に評価することができます。

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図6 スケーラブルな32チャンネルデータ管理

試験を次のレベルへ

HIOKIのPW4001は、安全で効率的かつ基準に準拠した測定を可能にし、自動車認証試験の現場を変革します。CAN電圧と高精度・小型の電流センサーを組み合わせることで、セットアップ時間を短縮し、安全リスクを排除し、すぐに使用できる電力データを提供。認証チームが時間・コスト・労力を節約できるよう支援します。PW4001は単なる測定ツールではなく、EVおよびハイブリッド車両試験の未来のための完全なソリューションです。

詳細は以下の資料をご覧ください。

詳しい製品の情報は、Webサイトご覧ください。 特定のアプリケーションに関するデモンストレーションやご相談は、お問い合わせフォームから弊社までご連絡ください。

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