圧電セラミックスのインピーダンスをより速く、正確に測定
0.5 ms/ポイントのインピーダンス測定で、生産量の増加に対応した検査体制を実現
今回のお客様
長年培ってきた開発技術と生産技術を活かし、さまざまな製品で稼働する電子部品を開発・製造・販売しているZ社。近年は情報通信機器メーカ・自動車部品メーカなどからの需要増加に合わせて、圧電セラミックス製品の新規開発や大量生産に注力しています。
導入前の経緯
より速くより正確に、圧電セラミックスのインピーダンスを簡単に測定したい
電子部品は製造工場の稼働時間が等しい場合、製造個数が1個でも100万個でも、かかる人件費や光熱費に大きな違いは発生しません。つまり、生産個数を増やせば増やすだけ利益増につながり、1個ごとの生産時間を短縮することで企業は利益体質を強化できます。ただし、いくら生産スピードを速めても、品質検査にかかる時間も併せて短縮できなければ効果は得られません。中でも、電子部品の特性を評価するパラメータとして重要なインピーダンス測定は、時間を短縮しようとすると正確性を欠き、正確に測定しようとすると時間がかかってしまう難しい工程でした。
近年は圧電セラミックス製品の開発・製造・販売に注力しているZ社でも、この問題が生産体制強化の壁となっていました。Z社ではこれまで他社製の計測器を使用していましたが、全数検査など大量の電子部品を素早く測定するには不向きで、製造した圧電セラミックス製品の出荷検査においても、高速に周波数を切り替えて共振周波数を測定するのが困難でした。また、増産計画に合わせて気軽に計測器を買い足せないほど高額だったことや、オーバースペックで使用していない機能がたくさんあったことにも不満を感じていました。
スマートフォンをはじめ、センサやアクチュエータを搭載した身近な電化製品が増え、半導体や圧電素子など電子部品の市場は、今後もさらなる成長が続くと予想されています。
当然、圧電セラミックスの需要増大が見込まれる中で、Z社としては生産量を犠牲にすることなく正確で、素早く、簡単にインピーダンスを測定できる計測器を渇望していました。
お客様がHIOKIを選んだ主な理由
インピーダンスのスイープ測定を、圧倒的な速さで、簡単に実行できる
たとえ高速で高精度なインピーダンス測定ができる計測器があったとしても、機器サイズが大きかったり、高額であったり、制御が複雑だったりするものは、Z社の生産ラインでは活用できません。また、出荷検査において良否を判定する機能の充実と使いやすさ、特に同じラインで多品種の電子部品を検査する際に、設定を切り替える段取り替えに時間がかからないことも、Z社は必要な条件として挙げていました。
そして、過去に別の案件でつながりがあったHIOKIへ、生産ラインにおけるインピーダンス測定に関する相談を持ちかけたZ社。問題解決の切り札としてHIOKIから提案されたのが、インピーダンスアナライザIM3570でした。
IM3570は小型サイズでありながら、測定周波数や測定レベルを連続的に変化させるスイープ測定が可能で、1測定点あたり0.5msという圧倒的な速さで測定できます。Z社にとって、より多くの圧電セラミックスを製造し、全数検査して出荷するためにも、この測定スピードは必要不可欠なメリットでした。
ほかにもIM3570なら、圧電セラミックスの検査における共振点の自動サーチが可能となり、素早く良否判定ができる点。異なる電子部品を同じラインで検査する際にも、簡単な設定で連続かつ高速に測定できる点。搭載されたタッチパネルのおかげで、直感的な操作ができる点などを、Z社では高く評価。価格面や導入の手間も含めて総合的に判断し、IM3570の導入を決めました。
導入後の効果
1測定点あたり0.5 msの高速測定により、生産量の増加に対応した検査体制を実現
圧電セラミックス製品の検査では、共振点や共振の鋭さが重要な指標となりますが、IM3570はそれらを自動で高速にサーチして判定できます。そして、DCおよび4 Hz~5 MHzの周波数帯域を5桁分解能(1 kHz未満は0.01 Hz 分解能)で設定できます。さらに豊富な判定機能を有しているため、さまざまな電子部品の良否判定が簡単に行えるようになりました。
- DUT共振状態の評価を行うピーク判定機能
IM3570により高速に安定した測定が正確にできるようになったことで、検査工程の歩留まり向上に貢献できただけではなく、市場の需要増に呼応した増産計画にも対応できる検査体制を整えることができました。
Z社では生産体制の強化を進めていくため、インピーダンス測定にかかる時間を、1測定点あたり0.6ms程度まで短縮するという目標を、導入前に掲げていました。今回IM3570を導入したことで、目標を上回る成果を得ることができました。
- IM3570と従来モデルの測定時間の比較
- 100回測定時の繰り返し精度
Z社ではこのIM3570を長きにわたって継続利用していますが、定期的にHIOKIが内部の演算処理などの見直しをかけ、現時点では1測定点あたりの測定時間が0.5msとなり、導入時よりもさらに測定速度が増しています。これは生産量を増やすために、少しでも測定時間を短縮するため両社が努力を積み重ねた結果の賜物です。
なお、Z社ではこの間に、圧電セラミックス製品は市場拡大とともに増産を繰り返しています。この順調な事業拡大において、IM3570が一翼を担っていることは間違いありません。