データセンターにおけるUPSの役割とコミッショニング試験の重要性
概要
データセンターは、医療、金融、および企業の基幹システムにおけるグローバルなIT運用の基盤となっています。これらのシステムは継続的な稼働が求められるため、電力の信頼性は非常に重要です。安定したパフォーマンスを確保するためには、電力システムに極端な負荷変動や入力障害が発生した場合でも、高い信頼性を維持しなければなりません。本記事では、データセンターにおける無停電電源装置(UPS)の重要な役割、厳格な試運転試験の必要性、および稼働時間を保証するための電力品質の検証方法について解説します。

停電対策以外のUPSの役割
データセンターのUPSシステムは、一般的に常時インバーター方式を採用しており、入力側の交流電力を直流に変換した後、再び交流に変換します。これにより、出力電圧と周波数は入力の変動から完全に独立して維持されます。基本的な停電対策に加え、これらのシステムはいくつかの重要な機能を果たしています:
図1. 基本的な常時インバーターUPSの構成:整流器、インバータ、バッテリー、スイッチ
- 停電対策: 入力電源が途絶えた際にも重要なIT機器への電力供給を維持し、サーバーのシャットダウンやデータ損失を防ぎます。
図2. 入力電圧が遮断されても出力電圧は影響を受けない
- 電圧および周波数の安定化: VI(電圧独立)またはVFI(電圧・周波数独立)動作を採用することで、UPSは安定した出力を供給し、入力電圧の変動から敏感なサーバーやネットワーク機器を保護します
図3. 入力電圧や周波数が変動しても出力は影響を受けない
- 過渡負荷に対する耐性: 現代のAIトレーニングには大規模な並列処理が求められており、これにより消費電力に急激かつ大幅な変動が生じます。堅牢なUPSは、非線形負荷を管理している場合でも、こうした過渡現象の発生時に電圧の安定性を維持しなければなりません。
図4. 急激な負荷変動下でも出力電圧は影響を受けない
コミッショニングにおける現場受入試験
現場受入試験(SAT)は、UPSシステムが実際の運用環境において設計どおりに動作することを検証するものです。効果的な試運転を行うには、汎用的なチェックリストに頼るのではなく、個々の現場に合わせた試験計画を策定する必要があります。IEC 62040-3に従い、SATでは、費用対効果とシステムの長期的な信頼性の両方を確保するため、工場試験では検証されていない項目を中心に試験します。
- 停電時の無停電電源供給の確認:この試験では、UPSが通常モードで動作している間に商用電源の停電をシミュレートします。蓄電(バッテリー)モードへの移行時の出力電圧の安定性評価や、入力電源復旧の際の過渡応答などの確認を行います。
図5. スイッチを開放し、交流電源の停電を模擬する
- 出力安定性のためのステップ負荷試験:AIトレーニングは大量の電力を消費するため、急激かつ大幅な負荷変動を引き起こします。この試験では無負荷から100%負荷への移行などをシミュレートし、UPS出力が出力を維持できることを確認します。異常は標準的な限界値と照合することで、規格への準拠を確認します。
図6. 測定偏差と持続時間のプロットにより異常を判断する
- 通常モードからバイパスモードへの切り替え:万が一UPSユニットに障害が発生した場合、サーバーの稼働を妨げることなく、システムをバイパスモードに移行させる必要があります。このテストでは、実際の配線および負荷条件下における過渡現象を観察し、シームレスな切り替えが確実に行われることを確認します。
図7. 切り替え中の電源供給を維持するためのUPSバイパス構成
電源品質アナライザが現場受入試験にどう役立つか
ただの測定ではなく確信を持った実証とするため、コミッショニングチームには高い信頼性を備えた計測機器が求められます。

図8. 三相電源を測定するPQ3198
- IEC 61000-4-30 クラスA準拠:IEC61000-4-30の規格における計測器の最高等級であるClass A準拠は、契約上の要件評価や、紛争発生時の証拠などに活用されます。HIOKIの電源品質アナライザPQ3198は、この規格に基づく第三者認証を取得しており、重要なデータセンター環境において求められる再現性を確保しています。
- トレンドデータとイベント波形の同時測定:効果的なUPS試験を行うには、長期的な実効値の傾向と高速過渡波形の両方を評価する必要があります。PQ3198は、半周期で演算される実効値トレンドデータと高解像度の高速イベント波形を同時に記録するため、エンジニアは長期的な挙動と特定の異常の相関関係を把握することができます。

図9. 解析ソフトPQ ONEにより、実効値トレンド(上)とイベント波形(下)を同時に表示
- 複数チャンネルの同時解析: UPSのスイッチング性能を評価するには、多くの場合、複数ポイントでの同期測定が必要となります。PQ3198の4チャンネル構成は、UPSの一次側でかけたトリガにより異なる回路である二次側を同時測定できるなど、柔軟な計測が可能です。
図10. 2つの異なる系統を同時に測定
- 根本原因の診断:PQ3198は、電圧低下、電圧上昇、波形歪みなど、幅広い電力事象を捕捉するため、単なる合否判定ツールにとどまりません。電力品質の問題の根本原因を診断するために必要な、詳細情報を提供します。

図11. PQ3198で記録されたイベント波形。負荷が急増しても電圧は安定している
PQ3198を試運転プロセスに組み込むことで、システムの性能を実証し、顧客が求める信頼性を保証するために必要な、客観的で再現性のあるデータを得ることができます。
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