UPSの動作試験を効率化するために

UPSが必要な理由とは?

突然の停電がビジネスや日常生活に与える影響を想像してみてください。たとえば、パソコンが突然シャットダウンし、大切なデータが失われたり、生産ラインが停止してしまうこともあるでしょう。こうした予期せぬトラブルを防ぐために不可欠なのが、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源装置)です。

UPSは、商用電源が途絶えた瞬間から代わりに電力を供給し、業務や機器を守ります。オフィスや店舗、データセンター、さらには人命を支える医療機関や、常に稼働が求められる工場など、電力が途絶えることが許されない重要な場面で活躍しています。とくにデータ損失が許されないサーバーや、医療機器の停止が人命に関わる病院では、UPSの存在は不可欠です。

UPSの動作確認が重要な理由

地球温暖化や異常気象による落雷や停電の頻度が増加する中で、UPSが正常に動作するかどうかを定期的に確認することは非常に重要です。UPS内部のバッテリーは日々劣化しており、突然故障が発生するおそれがあります。もし定期的な動作確認を怠れば、データ損失やシステム障害、機器の損傷といった深刻なリスクが発生するかもしれません。さらに、UPSそのものが発煙や発火を引き起こし、火災につながる危険性もあります。
「UPSが動作するだろう」と過信するのではなく、「UPSが確実に動作することを確認する」ことが重要です。

波形を活用したUPS診断の有効性

UPSの健康状態を診断する最もスマートな方法は「波形」を観察することです。正常な正弦波の電圧・電流波形を確認することで、UPSが安定した電力を供給していることがわかります。一方、波形に歪みが見られる場合、UPS内部の異常や負荷の問題が潜んでいるおそれを示します。

また、停電が発生した際にUPSがどのタイミングで電力供給を開始するのか、そのタイムラグを波形で正確に確認することができます。過渡状態を観察することで、電力供給がスムーズに行われているかを一目で把握できます。波形を通じてUPSの動作を「見える化」することで、より深くUPSを診断することができます。

UPSの動作試験方法

UPSの動作試験では、停電が発生した際にUPSが確実かつ安定して電力を供給するかを確認します。具体的には、UPSの1次側(入力側)、2次側(出力側)、そして蓄電デバイスの電圧をアナログユニットで測定し、電流は電流センサと電流ユニットで測定します。また、UPS内部の温度を計測することで、異常発熱の有無もチェックします。

商用電源のノイズや高調波の影響を確認するためには、高速記録が可能な記録計が求められます。
MR8848なら、20 MSの高速サンプリングと最大16チャンネルの測定が可能で、単相UPSから三相UPSまで幅広く対応します。さらに、電圧、電流、温度といった異なる物理量を同じグラフ上に表示するため、UPSの動作やタイミングが把握できます。まさに試験の効率を最大化する測定器です。

単相UPSの場合

単相UPSの場合、1次側と2次側の電圧・電流、さらに内部の蓄電デバイスの波形を同時に記録することで、停電時の挙動や電源復帰までのタイムラグを確認できます。

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取得すべきチャネル数は6ch

  • 1次側の電圧1ch、電流1ch
  • 2次側の電圧1ch、電流1ch
  • 蓄電デバイスの電圧1ch、電流1ch
  • UPS各部の温度計測

三相UPSの場合

三相UPSの場合は、1次側の電圧・電流を各3ch、2次側の電圧・電流を各3ch、インバーターと蓄電デバイス間の電圧・電流、温度計測など、多チャネルの測定が必要です。

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取得すべきチャネル数は14ch

  • 1次側の電圧3ch、電流3ch
  • 2次側の電圧3ch、電流3ch
  • 蓄電デバイスの電圧1ch、電流1ch
  • UPS各部の温度計測

MR8848は、最大16の絶縁アナログチャンネルで20 MS/sのサンプリングを提供し、同一グラフ上で多数のパラメータ監視を実現します。

まとめ

UPSは単なる電力供給装置ではありません。ビジネスの継続性、データの安全性、そして人々の安心を支える重要な役割を果たしています。UPSがその役割を確実に果たし続けるためには、定期的な波形による動作確認が必要です。そして、その試験を効率的かつ確実に行えるのがHIOKIのメモリハイコーダ MR8848です。UPSの動作を確認することで、私たちの社会の安全・安心を守ることができます。

測定器の構成例

  • メモリハイコーダ MR8848
  • 電圧計測:アナログユニット 8966
  • 電流計測:3CH 電流ユニット U8977
  • 温度計測:温度ユニット 8967
  • 電流センサー:AC/DCカレントプローブ CT6843A、クランプオンセンサ 9272-05

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