マルチ入力MPPTインバーター開発における効率評価
はじめに
太陽光発電(PV)システムの発電量を監視し最大化することは、ステークホルダー(需要家)にとって極めて重要です。発生するエネルギーにばらつきがある太陽光モジュールを監視し、発電量が最大となるように制御しているのが、MPPT(最大電力点追従器)と呼ばれるインバーターです。このアプリケーションノートではストリングインバーターと呼ばれる、マルチ入力MPPTインバーターの開発において、電力変換効率の評価に最適なパワーアナライザPW8001および光リンクインターフェイス機能について紹介します。
マルチ入力MPPTインバーターとは
MPPT方式とは、気象条件等の変化で常に変動する太陽光モジュールの最適動作点に追従しながら動作する機能です。インバーターへのDC電力入力が最大化するように制御することで、発電効率が向上します。マルチMPPTインバーターとはMPPT回路を複数持つインバーターのことで、個々のストリングを最大効率で発電することができます。また、マルチMPPTインバーターは日照条件や設置方法に対する高い柔軟性を持ち、ストリングの拡張性にも優れています。
計測課題
マルチ入力MPPTインバーターの総合的な電力変換効率を測定するためには、複数のDC入力と3相AC出力を同時に測定しなければなりません。また、余剰電力を蓄電池システムへ充電するような複合型のパワーコンディショナと連携する場合にも、電力測定チャネルが追加で測定する必要があります。さらに電力と効率測定には以下のような課題もあります:
- 単体のパワーアナライザの測定チャネルではすべてのDC入力とAC出力を同時に測定できない。
- 複数台の電力計を使って後処理でデータの時刻を同期し統合、演算するのが手間。
- データを統合して効率演算しても、効率の測定結果にばらつきが出てしまう。
ソリューション:光リンクによる16chの同期電力測定
マルチMPPTインバーターの電力変換効率は、HIOKIのパワーアナライザPW8001の光リンクインターフェイス機能で測定できます。光接続ケーブルで2台のパワーアナライザを接続することで、最大16CHをもつ1台のパワーアナライザとして電力測定ができます。
構成例
DC入力の測定に13CH、3相AC出力の測定に3CHを使用し、電力変換効率を測定します。
- PW8001-04: 光リンクインターフェイスオプション ×2
- U7001:2.5 MS/s 入力ユニット (DC 1500 V 入力対応)×16
- CT6872:50A貫通型電流センサー ×13
- CT6873:200A貫通型電流センサー ×3
- L6000:光接続ケーブル ×1
光リンクインターフェイス機能による同期で安定した電力測定が可能
光リンクインターフェイス機能は、プライマリーとセカンダリーに設定した2台のパワーアナライザの電力演算データ更新のタイミングを同期することができます。データ更新タイミングのずれがなく安定した電力効率測定結果を得られます。
設定からデータ収集まで1台で操作
プライマリー機への操作によって、2台のパワーアナライザの設定・プライマリー機へのデータ収集とデータ出力ができます。2台のパワーアナライザを個別に操作する必要がなく、シンプルなシステム構成で効率的なデータ収集が可能になります。表1は光リンクインターフェイス機能の概要を表しています。
表1: 光リンクインターフェイス機能の概要
機能 | 説明 |
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機器の操作 |
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収集可能なデータ項目 | 演算測定項目およびフリッカ測定項目を除く基本測定項目、および広帯域高調波測定項目(0次~50次まで) |
データの演算 | 収集した測定データを利用した、プライマリー機での演算(効率・ユーザ定義演算)と、演算結果の表示 |
データの出力と保存 |
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図1は光リンクインターフェイス機能を利用した、8MPPT入力、三相出力インバーターの効率測定例を示しています。
- 図1: 光リンクインターフェイス機能を利用した、8MPPT入力、三相出力インバーターの効率測定例
最後に
電力変換効率を正確に測定する上で、電力演算のデータ更新タイミングを同期することが重要です。パワーアナライザPW8001の光リンクインターフェイス機能は、2台のパワーアナライザの同期電力測定に対応しています。マルチ入力MPPTインバーターの電力変換効率だけでなく、4輪インホイールモーターの同時測定など、多チャンネルの電力変換効率測定に利用できます。製品についてより詳しく知りたい方は製品ページへご確認ください。また、製品のデモ依頼やアプリケーションに関する相談はHIOKIの担当者にご連絡ください。